第2話 天界で三美神から色々と説明を受けるお話 

 天界に着いたら辺りは真っ白だった。そんな空間にシンイチとアテナとアフロディーテとヘラが佇んでいる。最初に口を開いたのはアテナだった。


「驚いたでしょ? ここは生命の間と言ってね。特殊な輪廻転生をする魂に神々が説明を施す所なの」

「そうなんですか。それにしても何もないですね」


 シンイチがそう呟くとアフロディーテが反応した。


「普段からこんな何もないところに住んでいるわけじゃないからね? ちゃんと家もあるし楽園もあるんだから」

「わかりましたよ。それより、スキルのこととか、これから行く世界のこととか教えてくれませんか」

「うむ。先ずは我が与えたスキルから説明するとしよう。スキル【万物の王】はその名の通りあらゆるものの王となるスキルである。簡単に言えばテイマーじゃが、そんじょそこらのテイマーとは訳が違う。文字通りなんでもテイムできるのだ。ハーレムを作るもよし、魔物で最強軍団を作るもよしじゃ! だが、その能力ゆえ危険も伴うであろう。使い方にはくれぐれも注意することだな」

「えっと。そんなチート能力もらって良いんですか?」

「うむ。約束じゃからな」

「それじゃあ次は私が授けたスキル【全知】についてね。これもその名の通りなんだけど、あなたが知りたいと思ったことを知ることができる能力なのよ。よくある鑑定みたいなものね。だけど、この能力の真の力はなんたって魔法ね」

「魔法があるんですか?」

「ええ、そうよ。あなたがこれから行く宇宙には魔法が存在するわ。その知識が全てあなたの元にあるんだから、既存の魔法なら全て使えると思うわ」

「まるで賢者じゃないですか!」

「まぁ、そうね。でも全知なんだから、賢者以上じゃない?」


 自分が授かったスキルのチートさにシンイチは心が躍る。


(この二つのスキルを使ってやりたいことが山ほどある。魔法も使いたいし、テイムもしたい。早く試してみたいな)


「じゃあ、最後はあなたが行く宇宙のことについてね。大体はあなたのいた宇宙と変わらないんだけど、魔法が存在するんだよね。で、あなたの行くシリウスっていう星の文明は科学よりも魔法に大分偏っていてね、科学があまり発展していないのよ。まぁそれはそれで良いのだけれど、きっと色々な面で文明の差を思い知らされると思うから頑張ってね」

「あ、はい」


 やはり中世ヨーロッパ並みの文明レベルなのだろうか。某ネズミーランドのようなファンタジー感あふれる所だと良いなと思う。


「もう質問はない?」

「あのー。スキルってどうやって使うんですか?」

「うむ。【万物の王】を使う時は、テイムしたい相手に向かって『我に従え』的なことを言えばよいのじゃ」


 そんなに簡単にテイムできてしまうのか。発言には十分注意しようとシンイチは心に刻んだ。


「【全知】はね。さっきも言ったけど、ファンタジーゲームや小説によくある鑑定と賢者の複合スキルみたいなものなの。鑑定は調べたいものがあったらそれについての情報が全て頭の中に入ってくるわ。賢者は魔法を使いたいって思った時に魔法のイメージが出てくるの。それに従って魔法を使えばいいわ」

「なんとなくわかりました」

「試しに自分自身を鑑定してみたら?」

「自分自身を?」

「そうよ。レベルとか魔力とか体力が分かるはず」

「レベル……。やってみます。【全知】」


【名 前】カミヤ シンイチ

【種 族】人間

【性 別】男

【年 齢】17歳

【職 業】超越者

【レベル】17

【体 力】78/78

【魔 力】0/0

【攻撃力】42

【防御力】73

【魔攻撃】0

【魔防御】0

【俊敏性】121

【幸 運】1111

【ステータスポイント】170

《スキル》

【全知】

【万物の王】

【言語理解】


 イメージがシンイチの脳内に入ってきた。


(超越者ってなんだろう? それに魔法関係が全部ゼロって。魔法使えないじゃん。あと幸運どうした。一つだけ数値がバグってるよ。ステータスポイントって、ゲームみたいにステ振りできるのかな。それに【言語理解】っていう能力があるけど、異世界の言葉がわかったりするのかな)


「あのー。また色々と質問したいんですけど」

「うむ。聞くが良い」


 どうやらヘラが答えてくれるようだ。


「大体ステータスって平均いくつなんでしょうか」

「100だな。シンイチは争いのない時代、地域で過ごしたから攻撃力と防御力が低い。それに魔素のない宇宙にいたから魔法関係がゼロじゃ。だが、あっちの世界に行ってレベルを上げてステータスポイントを獲得すれば使えるようになるはずじゃ」

「もうステータスポイント170あるのですが」

「そうか。生まれてから一度もポイントを振っていなかったのだな。試しに魔力と魔攻撃に10ずつ振ってみよ。頭で強く念じれば出来るはずじゃ」


 ヘラに言われるがままにシンイチが頭で念じると、ステータスが変わった。


【名 前】カミヤ シンイチ

【種 族】人間

【性 別】男

【年 齢】17歳

【職 業】超越者

【レベル】17

【体 力】78/78

【魔 力】10/10

【攻撃力】42

【防御力】73

【魔攻撃】10

【魔防御】0

【俊敏性】121

【幸 運】1111

【ステータスポイント】150

《スキル》

【全知】

【万物の王】

【言語理解】


「出来ましたけど」

「それなら火系基幹魔法【マッチファイア】を使ってみよ。消費魔力は1だ」

「はい。やってみます」


(【マッチファイア】とイメージするだけで、その使い方が頭に浮かんでくる。これがスキル【全知】の力か!)


「【マッチファイア】!」


 詠唱するとシンイチの指先から小さな炎が出現した。指は不思議と熱くない。


「出来ました!」

「うむ。成功じゃな。他に質問は?」

「あのー。職業のところが超越者ってなっているのですが」

「それはな。時空の狭間を超越した者という意味じゃ。お主はこれから別の宇宙の別の時間軸に行くのだからな。超越者という訳じゃ」

「何か使命とかってあるのですか?」

「それは姫様を救って幸せにすることじゃ」


(姫様。確か世界で一番美しい女性だって言っていた。どんな人なのだろう。早く会ってみたい)


「わかりました。あのー。まだまだ質問したいことはありますが、無粋なのでやめておきます」

「そうか。我は気にせんのだがな。まぁ、【全知】もあることだしなんとかなるじゃろ」

「それじゃあそろそろ出発の時間ね」


 アテナがそう言ってシンイチの前に立つ。やはり本当にこの三人は美しいとシンイチは改めて思った。


「もう会えないのですか?」

「あなたの行いが良ければもしかしたらあなたが死んだ後にも会えるかもしれないわ」

「僕、そうなれるように頑張ります」


 アフロディーテが右横に立った。


「いい? あなたをこれから姫様の前に転移させるわ。あなたの最初の仕事は姫様を敵から守ること。頑張るのよ」

「はい!」


 敵とか守るとかよくわからなかったが、シンイチは流れのままに頷いた。ヘラがシンイチの左横に立って手を握る。


「お主ならできる。なんたって【万物の王】を持っているのだからな」

「ありがとうございます」


 シンイチの体が再び白い光に包まれていく。


「色々とありがとうございました」

「いいえー。頑張ってね」

「うむ。達者でな」

「元気でね」


 三人の声を聞きながらシンイチは真っ白な世界へと吸い込まれていった。そして目が覚めると、シンイチは大きなドラゴンの前に立っていた。そして背後にある馬車には二人の美しい女性がいた。

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