第69話

「うわぁ…」


エレベーターから出てすぐのところにロビーらしき広いスペースがある。


最上階の10階は夜なのに明るくて、シャンデリアが輝いていた。


「愛美」


「あ、李人さん」


こちらに歩いてくる人影。

さっきの服装とは違い、髪はサラサラで、スウェットらしきものに黒のパーカーを羽織った李人さんが現れた。


「ごめんな、夜に呼び出して」


「いえ、大丈夫です」


「眠くない?」


「はい…なんか、目が覚めてるので」


「そっか」


こっち、と言いながら李人さんが私の手をナチュラルにとった。


ー慣れてるのかな…。


スマートに手を取ったり、キス…したり。

女の子の扱いが慣れているような気がして、胸に何かざらりとしたものがあった。


手を引かれるままついていくと、李人さんが立ち止まった。


「見て、ここ」


「わあ…」


大きな窓から、星空が見える。


近くにはソファとテーブルが並んでいた。


「スウィートの人の特権だって」


「ス、スウィート?」

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