第43話

どれくらい泣いていただろう。


彼の頭が自分の肩に落ちていることにやっと気づいた。


それほど、彼は強く抱きしめてくれていた。


涙なんて枯れたような気がする。

合図のように、そっと彼の胸を押した。


愛美まなみ…?」


「ありがとう…ございます…」


横を向いて、彼との距離をとりながらお礼を言う。


彼の目は見れなかった。


ぐしゃぐしゃであろう顔は見られたくなかった。


「…ふっ」


「え…?」


「ひどい顔」


「な…」


振り向いた瞬間、ドキリとした。


彼の優しい笑みに。


「まだ、二つ許可とってなかった」


「な、何のこと…?」


「一つは、愛美まなみって呼ぶこと」


そういえば、最初からこの人は私のことを呼び捨てであった。

双子の衝撃で忘れていたけど…。


もう、なんか時効な気がする。


「別に、もういいです…」


「そっか、良かった」


今度は目を閉じて噛み締めるように笑う。


その笑顔さえも心臓に悪い。

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