第74話

「文化祭の喫茶店用の食券です」


「これ、お金払うんだよね?」


「そうなんですが…。眼鏡のお詫びにはならないかもしれませんが…うちのクラスの喫茶店、来てください」


「え、あ、はい」


気がつけば二つ返事。

ちょっと待て。彼女、同じクラスじゃなかったか?


なんか、見たことあるような…


人に興味のない俺はあまり人の顔を覚えない。


けど誰かが可愛いとか言っていた子な気がする。


「よかった…!じゃあ待ってますから!サービスするんで!」


パァッと輝くような笑顔。


「私、夏木です。夏木かんな。喫茶店きたら、私の名前出してくださいね!」


そう言って彼女はパタパタと走り去って行った。


ーいやだから同じクラス…


甘い香りが少し残っていてくすぐったい。


眼鏡を持つ手が熱い。


ー何だよ、これ。


彼女の笑顔が脳裏に焼き付いて離れない。


左胸も少し痛いような気がして抑える。


これってー。

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