第78話

後ろの高い位置から声がする。


後ろは振り返らない。

代わりに腕を組んだ里奈がニヤリとする。


「誰のこと?楓」


「あら玲唯くん、彼女さんの心配?」


「そうだけど…で誰がカッコいいって」


「さぁー、楓だって他の男子のことカッコいいって思ってもいいよね?」


バチバチという何かが見える。


あまりにも怖くて後ろが見えない。


玲唯は今、何を思っているのだろうか?


「思ってもいいけど」


「いいんだ。じゃあ玲唯くんも他の子が可愛いとか思ってるってこと?」


里奈、里奈。

悪女な顔してるよ。

私も怖いよ。


里奈は確かめたいのだろう。

本当に詩織ちゃんへの気持ちが消えたのか。


だから強い言葉を繰り返す。


でも、怖すぎる。


「まあ思うこともあるけど」


「はぁ?いい加減に…!」


里奈が止まる。

というかクラスの全てのざわめきが消えた。


ーえ?何?


里奈は急に息を呑んだが、すぐに手を口元に抑えて顔を赤くした。


耳元で声がする。


「楓が一番可愛いから、他の男のことカッコイイって言われんの無理なんだよね」


ぎゅっと首元を後ろから抱きしめられていることに、やっと気付く。


気付いた頃には、


クラス中が大騒ぎになっていた。

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