第75話

【そろそろ、後夜祭は終わりです】


抱きしめられた後ってどんな顔をすればいいんだろう。


私、どんな顔してる?


放送を聞いてどちらからともなく離れた身体。


まだ全身が熱い。


のに、玲唯は涼しい笑顔。


「ふはっ…」


「え、何!?」


「真っ赤」


「はへ…!?」


玲唯がくすくす笑う。


なんで私だけこんな翻弄されてるの?


ムカつく…。


「あ、なんか怒ってる」


「怒るよ!からかわないで…」


「可愛い。」


「…!」


何よ、その顔。

詩織ちゃんだけに見せるんじゃないの?


目を細めて、宝物を見るような笑顔。


調子狂うな…。


「みんな、戻ってくるかもな。俺らも帰る準備しようぜ」


ムカつく。ムカつく。

なんで玲唯だけ落ち着いてるの?


「おーい、かえ……」


玲唯のTシャツの裾を掴む。


「え…」


「明日から…玲唯の彼女でいいんでしょ?」


「…!」


今度は玲唯の顔が赤くなる。


してやったりって感じ。


返事はいらない。

また明日も一緒にいられるから。


玲唯のTシャツを離す。


「帰る準備するんでしょ?」


「あ、あぁ…」


視線はそらされてしまった。


あれ、失敗したかも…。


自惚れた自分にちょっと落ち込みながらも、まあいいかとロッカーに向かった。


廊下から声がし、みんなが戻ってくる足音が聞こえた。

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