第74話

「楓、意外と小さいよな」


「ちょ、何して!」


「わり…でも抑えられねー…」


ぎゅっと抱きしめられる。


玲唯の手が回る背中と頭が熱い。


今、玲唯の腕の中にいることが信じられない。


さっきまで違う人が好きだったくせに。


なんなの?


期待しちゃうじゃん。


「私でいいの…?」


「うん…」


玲唯の吐息が耳にかかる。


「ほんとに…?」


「うん…」


涙が出る。


さっきとは違う涙が。


「楓がいるのって、当たり前じゃないんだな…」


「今更…」


「ごめん。今更で」


玲唯の抱きしめる力が強くなる。


もう離してくれないと悟った私は、玲唯の背中に手を回した。


こんなに大きい背中になってたなんて。


知らなかったよ、玲唯。


ってか、好きな人と結ばれるのって、


こんなに幸せなんだね。


花火の音が耳に入る。


それくらい、静かな時間が教室に流れた。

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