第64話

「ねぇ、いいの楓」


「何が?」


帰り道。

バスで帰る里奈のバス停まで一緒に帰る。


「あんな暗闇に2人でいたなんておかしいじゃん。もっと怒ったら?詩織ちゃん彼氏いるんだし」


「うん…」


できるなら問い詰めたいし、冷たい言葉もいくらでも言えるだろう。


でもそれを玲唯の前ではできない。


「嫌われたくはないから…」


「楓…」


私はずるい。


好かれたい、嫌われたくない、

いい【幼馴染】でいたい。


「はぁー全く。楓のこと好きな人他にもいるんじゃないの?違う恋愛してみたら?」


「はは…ありかも」


「ってか、楓普通に優しくてかわいんだから、実は好きって人いるかもしれないよ?」


「えーほんとに?ってか、里奈はどうなの?明日の彼とのこと聞きたいなー」


ボンっと里奈の顔が赤くなる。

しどろもどろになる里奈を可愛いと思ってしまう。


同時に、うまく話題を変えることができてほっとする。


今は玲唯以外を見るなんてできない。


もし、大学が離れたら。


その時は、違う人と出会えるかも知れないけど。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る