第72話

「うっ…」


天王寺くんの家から飛び出して歩きながら涙を流していた。


道行く人が怪訝な目で見る。


どうして涙が出るのかわからない。


私がシンデレラだということを信じれないから?


天王寺くんの言葉を信じれないから?


私なんて、

私なんて、

何の取り柄もない。


「天王寺くんだって…」


私が生まれ変わりだから恋をしたんだ。


けど、そんな根拠なんてない。


私が今それを信じれる根拠は夢だけだ。


夢は夢。


私はシンデレラではない。


豊崎莉音というただの女の子。


可愛くもない、何の取り柄もない、女だ。


『そんなことない!』


けど、あの時の天王寺は、


本当に私だけの王子様みたいだったな、って思うの。

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