第88話

詩羽が来ることは伝えていなかった為一瞬迷ったが、

まぁ良いかと判断してそのまま生徒会室へ向かった。

いつもか置いておくが、詩羽のことも考慮し、今回は愛流も連れて来た。

「おはよ」

「…おはよう?」

雄大の戸惑った声に、詩羽が後ろに下がったのが分かる。

「誰だソイツ」

「…一応、俺の妹?」

凌駕の質問に答えると巡が引き攣った顔で言う。

「…疑問符も一応も普通は付かないと思うんだけど」

「…あ、ごめん。巡居るのに連れて来るのはダメだったか。

 詩羽、これから出掛けようか。いつもは行けない場所にしよう」

ふと思い出し、俺は詩羽の手を取った。

「え…いいの?」

「うん、勝手に連れてきたの俺だし」

「じゃ、じゃあお買い物行きたい!」

先程よりも大きな声で言う詩羽を見て、俺を頷いて愛流を見る。

「気に入りそうな場所を探しておきます」

「頼む。詩羽、愛流と先に車に戻ってろ」

「はぁい」

並んで生徒会室を出ていく彼等を見送り、巡達に向き直る。

「てことで、俺は今日もう帰る」

「え、あ…うん。

 やることそんなにないし、良いよ」

他は兎も角雄大からは返事があったから良いとして、

俺は生徒会室を出ようとする。

「雫、待って」

「…巡?」

「その買い物、俺も連れて行って」

予想外の言葉に、俺はキョトンとした。

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