第2話 次の男に切り替えるか

 彩は、足早にホテルの出口に向かっていた。

「ガキにもほどがあるわ。んとに‥」涙が潤んできていた。近くのトイレに駆け込み、そして思い切り泣いた。声が漏れないようにハンカチで口を抑えながら‥。


(なんで、私の出会いは年下のガキばっかなの?人の心も思いやれない‥もう、うんざり。10歳でも20年歳でも歳上の方が楽なのかもしれない)

化粧台で顔を洗い、口紅を塗りなおしてから家に戻った。


◆◆◇◇◇◆


『リリンンリンリン』と携帯の着信音が鳴っている。見てみると非通知電話だった。

いつもなら取らないが思わず通話マークを押していた。


「もしもし?」


「もしもし、彩さんですか?あの、翔太です。この間のこ」


その声を聞くなり、スッと切りボタンを押していた。そして、すぐさまその電話番号をブロックした。

(不愉快だわ。今さら声も聴きたくない)

しばらくしてから、孝子さんから着信電話が来ていた。


「もしもし、孝子です。あなたがラウンジから出て行ってから翔太さんには、お説教をしたのよ。彼ね。冗談でかわされるって思っていたのに、涙が潤んだあなたの顔を見て反省したみたいなの。煙草もね、かなりのヘビースモーカーでしょ。すぐには止められないけど、電子タバコとかに切り替えるって言ってたわ。もう少し付き合ってみてくれない?」


「無理です」


「でもね。そんな、1時間ぐらいで相手のことはわからないわよ。私の顔をたてると思って、3か月ぐらいは付き合ってみてくれないかしら」


「絶対無理なので、超優良物件は他の人に回してあげてください」


「うーん、なんだかもったいないような気がするわね‥でもそんなに言うのならしょうがないか。ただ、彼は誤りたいって言ってたの。だからせめて、それだけは聞いてあげたらどうかしら?」


「んん‥‥じゃあ。気は進まないけど。今からブロック解除するんで、その話だけ終わったらもう今回の件はお断りということで」おばちゃんの顔を立てて電話だけは出ることにした。


「ありがとうわかったわ。ブロック解除って『ハアー』よっぽど嫌われちゃったのね。じゃあ、そのことを翔太さんに連絡するから」


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