第26話

全て酒のせいにしてしまいたいが、生憎自分は完全に素面だ。





「何度言わせるつもりだ?服を着ろ」


「ん、あ、服……?」


「早くしねえと、飼わねえぞ」


「え?いいの?」


「3分以内だ。早くしろ」





腕時計に目を移した紫藤に百合は慌てて散らばった下着や衣服を手繰り寄せる。最後にコートを羽織った百合は、こちらをジッと見つめながら佇む紫藤の胸に飛び込んだ。





「ありがとう。貴方、やっぱり優しい」


「引っ付くな」


「ねえ、名前教えて?」


「あんたから名乗りな」


「私は美夜」


「嘘をつくな。高宮百合」


「……なんで分かったの?」


「知られたくないなら用心しろ。ポッケに身分証明書入ってたぞ」


「あらあら。じゃあ、秘密にしてね」





迂闊だったと反省しつつ、百合は紫藤の名前を催促した。

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