第26話 【変化】
それから俺は、常盤先輩に相談しながら写真を撮り続けた。
そこそこ上手く撮れるようにもなったと思うけど、俺の目的はあくまで呉羽に送る写真が撮りたいだけ。だからある程度上達出来ればそれでいい。
そう思ったんだけど、意外とハマってる。
「圭吾、ずっと写真撮ってるよな」
「んだよ。お前のことは撮らないぞ」
「ケチ。いや、そういうことじゃないんだけど……飽き性のくせに続くなぁって」
それに関しては何の否定も出来ないけど。
「やっぱりお前、写真家でも目指してみれば?」
「だぁから、これで食っていく気はねーよ。普通に常盤先輩の写真と見比べても全然違うし、無理だって」
「そこは練習していくしかないだろ。先輩だって最初から完璧だったわけじゃないんだし」
そんなことくらい分かってる。
ただ俺は呉羽に見せるためだけに写真を撮っているんだ。それを仕事にするつもりはない。
確かに俺はカメラにハマってはいるけど、仕事となると別だろ。
俺のは不特定多数に見せる写真じゃないんだ。
「いいと思うけどなぁ。ほら、ネットに載せてみるとかどうだよ」
「めんど」
「言うと思った」
俺、あんまりSNSとかも好きじゃないんだよな。他人のことなんか興味ないし。
もし呉羽がそういうのやってるんだったらやってもいいけど。というかそっちの方が楽っちゃ楽なんだけど。多分やってないよな、アイツ。
「そうだ。今夜飲み会があるんだけど来ないか?」
「行かない」
「即答ー」
「俺、今日は常盤先輩とカメラマンのアシスタントのバイトするから」
「は、なにそれ。聞いてない」
「言ってないからな」
「なになに、興味ないとか言いながらそういうことしちゃってるんじゃん」
「ちげーよ。常盤先輩に頼まれたんだよ。それに、新しいバイトも見つけようと思ってたし、丁度良かったかなって」
新しいカメラとか色々買いたいと思ってたからな。それにプロの仕事にもちょっと興味あったし。
自分が仕事にしたいとかじゃなくて、単純にプロがどうやって写真撮ってるのか見たいだけ。それだけだぞ。
「前にも言ったけどさ。なんか、良いな。今の圭吾」
「なんだよ、キモイ」
「えー……そんなこと言う?」
「言いたくもなるだろ」
「だってさ、ちょっと前の圭吾ってずっとトゲトゲしてたのにさ、すっかり丸くなっちゃったじゃん」
「うっせーよ」
なんでコイツは俺の保護者面してるんだろうな。ちょっと付き合いが長いだけで気持ち悪いな。
まぁここ最近は喧嘩もしてないし、バイトもサボらなくなった。やりたいこと、目的があるおかげなのかな。
なんていうか、顔も見たことのないが気に影響を受けて変わるとか、本当に今の俺はらしくないよな。
悪いことじゃないんだけど、改めてそう思うと少しくすぐったい気もする。
呉羽は、俺のことどう思ってるんだろうな。
ただの良い人だと思ってるんだろうけど、いつまでこの関係を続けていけるんだろう。
いつか、向こうが飽きるかもしれない。そうなったら、俺はどうなるんだろうな。
俺は、これから先どうなっていくんだろうな。
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