第37話

夜の色など差し置いて光を放つこの街ではお互いの容姿や表情も明瞭に見えるようになっていた。


きっともう離れられないと、貴方なしではいられないという私の思いも涙に濡れた顔から溢れ出てしまっていると思う。


そんな私の瞳を見て雅久さんは優しい言葉を放ってくれた。






「綺麗だね……椿」


「え?」


「椿の表情、全てが綺麗だよ」


「……ふふっ、そんな事ないですよ?」






大袈裟に褒めてくれる雅久さんに照れて思わず顔が緩んでしまう。頬を伝う暖かな涙を拭いながら微笑むと、雅久さんが私の顔をじっと見つめてきた。






「……舐めてもいい?」






えっ?


突然、両頬を包み込まれると、少し舌を出した雅久さんの端正な顔が私の目元に近づいてきた。






「ちょっ……あの、ま、まってください、雅久さん!!」


「無理。ほら、俺の言うこと聞かないと。お嬢さん」

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