学校一の美少女が、辛辣な言葉を投げ掛けてくるんですが
座頭海月
第1話 放課後の出会い
「これでよしっと…」
返却箱に入れられた本を半分ほど片付け、体を伸ばす。
「ふぁぁ…今日はもういいか」
図書委員としての仕事を放置した彼は、いつものように窓のカーテンを閉じ、廊下側の椅子を横に綺麗に並べる。
そして…
「おやすみぃ…」
そこに寝そべり、目を閉じる。
1時間ほどの仮眠。彼にとって、それはこの一年で培った日常の一部であった。
まだ5月なのにもかかわらず外は暑いが、図書室はクーラーが効いており、椅子は柔らかなクッションが付いている。そして人気のないこの場所は、仮眠を取るには絶好のスポットなのであった。
校舎の端にあるためか、最後の見回り以外教師すらも来ないので、図書委員という立場の彼を邪魔するものは誰もいないのであった。
「………すぅ…」
そうして、彼はゆっくりと意識を手放した。
彼の名前は、真城彩斗。どこにでもいる普通の高校2年生の少年である。
夕日の光が目を照らす。
「んんっ…?」
カーテンは締めたはずだけど、もしかして隙間でも空いてたか…?そう思い顔を上げると、一番遠い窓際の席で一人の少女が本を読んでいた。
日本では珍しいプラチナブロンドというのだろうか?そんな美しい長い髪とライトグリーンの瞳を持った美少女であった。
机の下に見える、組んだ足から覗くその白い大腿部は健全な男子高校生としては非常に目に悪い。
ふと、彼女が足を組み直す。その瞬間、深淵の中に一瞬だけ白い光が…
「…目は覚めたかしら?」
「……えーっと…何か御用で…?」
まるで鈴のような澄んだ声。
放課後に人が来るのは珍しい。この学校は勉強スペースが他にあるし、青春の大半が詰まった放課後の貴重な時間を使ってまで本を借りにくる高校生なんて滅多にいない。
もしかして俺になんか用か…?もしかして今のわざとで、見たんだから金よこせってことか…!?なんて考えていると、彼女は口を開く。
「この本を借りたいのだけど」
そう言い指を指すのは手に持っていた最近話題の恋愛小説。
「あ、あぁ…そのために待ってたのか?そこのスキャナーで本の裏のバーコードをぴってして貰えれば大丈夫だから…」
「ふーん、そう」
そう言うと、彼女は立ち上がり自分で手際よく貸出作業を行う。
見た目からして外国人っぽいし、留学とかか何かで日本に来て間もなくて、使い方がわからなかったのだろう。それで起きるまで俺を待っていたと。
とはいえ彼女の動きを見るに問題はなさそうである。
(今の時間は…よし)
時間はまだ4時半、あと三十分は寝れそうだ。
いそいそと体勢を戻し、顔を腕で隠し目を閉じる。
ふと、甘く優しい匂いが鼻をくすぐる。
きっと前を彼女が通ったのだろう。見た目も完璧、スタイルも完璧、それでいて匂いまでいい匂いとは、こういう人のことを勝ち組という──
「───朽木糞牆…貴方にお似合いの言葉ね」
「───んぇ?」
目を開くと、彼女がこちらをのぞき込んでいた。ライトグリーンの瞳と目が合う。日本人離れした美しい顔が想像以上に近くにあった。
(すっごい綺麗な顔だな…というかきゅうぼく…なんだって?)
突然の接近と謎の言葉に困惑していると、彼女はそのままスタスタと図書室を出ていった。
「…なんだったんだ?って、本置いていってんじゃねぇかよ」
そこで、さっきまで彼女が座っていた場所に沢山の本が残されていた。
返却ボックスの中の片付けはあとからでも大丈夫だが、机の上の本は先生に注意されるので片付けなければならない。
仕方ない…そう呟きながら本を片付ける。有名なライトノベルやミステリー小説など、様々な本がそこには置いてあった。
流石にこの短時間で全部見たとは思えないので、多分なんとなく気になった本をどんどんと出していったのだろう。
面倒くさいが、ちまちまと本を片付けていく。
「そういや、なんか最後に言ってたな?」
きゅうぼく…ふんしょうだったか?
ふと、彼女が言っていた言葉が気になり、近くにあった辞典を手に取る。
「きゅうぼく…きゅう…あ、あった。えーっと…なになに…?朽木糞牆……怠け者、役に立たない無用なもの………って、馬鹿にされてたのかよ!?」
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