第3話 彼岸

 「異世界に行く方法」というのは、インターネットで探すとたくさん見つかります。

 中でも簡単なのは六芒星の中に「飽きた」と書いた紙を握りしめて眠る方法。これで起きた時に紙が無くなっていたら、異世界に行ったということだそうです。

 これは、そんなお話です。


 私の職場の友人のYは、ちょっとおかしなところがありました。

 墓地を巡るのが趣味で、そこにお供えの食べ物があれば食べてしまうと言うのです。

「そんなのバチが当たるよ!」

 私は少しきつめにそう言いましたが、Yは気にした様子はありませんでした。

 他にも、Yは怪談めいた話を繰り返ししていて「この世界は退屈だ。くだらない」ということを言っていました。

 そんな時、Yが失踪したと聞きました。無断欠勤が続くのでYのアパートに上司が向かうとそこにも居なかったというのです。私はふと、お供えのことを思い出しました。


 よもつへぐい――Yは異世界に行くためにそうしていたのではないか、と。

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