第10話 「萌え」と「露出度」
一時間後。
風呂上がりのフレイヤさんが下着を身につけるのを背中側から手伝った後、僕は自分のパジャマを彼女に貸した。
「これくらいなら、自分で着られますよね?」
「……はい。何から何まで、申し訳ございません」
「いや、構いませんよ、これくらい……」
そう答えた後、ちゃんと着用できるか心配だったので、僕は彼女の更衣が終わるまで風呂には入らず、居間で待機することにした。
そして、三分ほど経った頃。
「終わりました?」
衣擦れの音が止んだので、僕が扉を閉めたまま問うと、短く「はい」という答えが返ってきた。
(本当かな……)
僕が若干、躊躇いながらも引き戸を開くと、フレイヤさんはトップスの袖やズボンの裾はダボダボなのに胸元はパッツンパッツンという、非常にアンバランスなパジャマ姿で、フローリングに敷かれた布団の上に横座りをしていた。
なぜだろう。
先程の大胆に背中を露出していた状態よりも、今の服装のほうがグッと来るような気がする。
いわゆる「彼シャツ」的な、この絶妙にサイズが合っていない感じが萌えるのだろうか。
「あの……どうなさったのですか? 結人さま」
僕の視線が今までとは違うことに気が付いたのか、フレイヤさんは苦笑しながらそう尋ねてきた。
今の自分の姿が魅力的だという自覚がなさそうなのが、また良い。
「い、いや……なんでもないですよ。それより、慣れない世界で疲れたでしょうから、先に寝ててください」
だが、その感情を素直に表に出すのは恥ずかしかったため、僕は適当に誤魔化した。
「かしこまりました。おやすみなさいませ、結人さま」
「おやすみなさい」
素直に横になるフレイヤさんに軽く会釈して、僕はそのまま風呂場に向かった。
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