君と僕の融合変身(メタモルフュージョン)
うつせみ
序章
第1話 鉛色の空
『すみません。私、実は彼氏いるんです』
彼女――いや、そうだと思っていた相手からそう連絡された時、男はどう反応するべきなのだろう。
要は「私は二股をかけていました。あなたとは遊びで、本命の彼氏は別にいます」ってことか、あるいは「今カレと最近いまいちだったのであなたのこともキープしてみましたが、やっぱり彼氏のことが好きだって気付きました」ってことか、そのどちらかだと思うのだが、問い詰めるべきか、それともブロックするべきか。
結論から言うと、僕はそのどちらも選ぶことができなかった。
だって、問い詰めたところでお互いに嫌な思いをするだけだろうし、かといってきっぱりブロックして関係を断ち切れるかというと、まだ心のどこかに未練があったのか、それも難しかったのである。
向こうにとっての僕は大した存在ではなかったのかもしれない――いや、きっとなかったのだろうが、僕にとっての彼女は、中学時代のトラウマを乗り越えて、ようやくできた恋人だったからだ。
不幸中の幸いなのは、彼女はSNSで知り合い、オフ会で仲良くなった相手なので、学校で顔を合わせてしまい、気まずくなる心配はないということくらいか。
(なんでこうなるかな……)
鉛のような分厚い雲に覆われた十二月の空を見上げながら、僕はスマホをポケットにしまい、白いため息を漏らした。
世の中には適当に生きているだけでも恋人ができて楽しく過ごせている人間もいるだろうに、どうして僕の恋愛はこういつも、上手く行かないのだろう。
どうやら今年のクリスマスも、一人で過ごす羽目になりそうだ……。
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