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迎えに来てくれた先輩は一言も話さないし、着いた先は荻野の家。


無言で車を降り、無言で客間らしき所へ通された。


「待ってて」


会ってから、はじめて発せられた言葉はそれだけだった。


一人で待つ部屋は静まり返っている。


窓から見える外はうっすら明るい。

まるで雪でも降ってきたかのようだった。


少しして荻野尚人…兄が部屋に入って来た。

続いてあった事の無い人が入って来て、その人がここの主だとわかった。


座っていたが、立ち上がり一礼をする。


「すまないね。こんな時間に呼び出したりしてしまって…」


閉めたドアに寄りかかっていた荻野先輩が


「だったら明日でよかったんじゃないの」


「雅人!」


うるさい!とでも言わんばかりに尚人さんは荻野先輩にきつく当たった。


閉められているドアをノックする人がいて、それに対して


「どうぞ」


主が返事をしたのを聞いてからドアが開けられた。


開いたドアから日本に居ない筈の父が入って来て


「すみません。飛行機が着くのが遅くなって…」


私の顔を見るなり、本の少し笑顔を見せたが、荻野さんを前に神妙な顔になり、私の隣に座った。


父の向かい側に主が、その隣には尚人さん。

荻野先輩は少し離れた場所で壁に寄りかかっている。


話を切り出したのは父だった。

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