第13話 旅の目的は元勇者を捕獲して国に突き出すことに決まりました

「そなた達に元勇者スラムの捕獲を依頼したいのだ」


 国王から直々に元勇者スラムの捕獲を依頼された。それもそうだろう。そもそもスラムを勇者に認定したのは国だ。でもそれがとんだロクデナシだったんだから、このままでは国としての威厳に傷がついてしまう。


 認定しておきながら捕獲対象にするなんて無責任にも思えるが、話を聞く限りスラムはただの犯罪者だ。そうなればむしろ捕獲するのは当然となる。


「私達に、ですか?」


 俺は片ひざでひざまずきながら、国王に確認を取るべく質問をした。


「もちろん我々としても国の威信をかけ、総力をあげて捜索している。だが報告によれば元勇者スラムは、勇者認定した時とは比べものにならないほど強くなっているという」


 それはそうだろう。スラムが勇者認定された時、あいつはFランク。冒険者としては一番下のランクだった。


 ではどうしてあいつが強くなれたのか? 自分で言うのもなんだが、それは俺とフレンによるものが大きい。そして『監視者』。


 勇者パーティーを結成して間もない頃は、俺と監視者が前衛を務めていた。そしてフレンは後方から支援魔法。その中間にまだ経験の浅いスラムが位置取るという陣形だった。


 なのでほぼ俺と監視者の二人で攻撃をしていた。フレンは俺達の支援をしつつ、もしもに備えてスラムに強化魔法をかけるという戦闘スタイル。


 それから少しずつスラムも戦闘に参加するようになり、フレンが追放される直前には、一人でも問題なく前衛が務まるほどに強くなっていた。


 おそらくスラムは、目で見た技術を自分のものにする能力に長けているのだろう。俺と監視者の動きや攻撃パターン、魔物の特徴などを見て覚えた。


 期間にすれば一ヶ月ほど。並の冒険者ならこんなに早く上達はしない。そういう意味ではスラムに並外れた素質があることは間違いないのだろう。そして勇者に認定した国も見る目があったということになる。


 だが人間性はどうか? そればかりは見た目じゃ分からない。人には多少なりとも二面性があるもので、少し見ただけで隠された本当の姿を見破るのは難しい。だから『監視者』という存在がいるわけだ。


「残念ながら元勇者スラムは犯罪をおかしてしまった。一度でも一線を越えてしまえば、罪をおかすことへの抵抗が次第に弱くなる。だから一刻も早く止めねばならんのだ」


 だからAランクでありスラムのことをよく知っている、俺とフレンに依頼したということだ。そしてミザリアはDランクながらも、やはりスラムと同じパーティーにいたということで、俺達に同行するという前提で召集された。


「もちろんそなた達が元勇者スラムから、一方的にパーティーを追放されたことも報告を受けている。そなた達は決して無能ではない」


「承知いたしました。私達としてもこのまま見過ごすわけにはまいりません。逃げ続けるためにどんな手段をとるか分かりませんので、一刻も早く捕獲できるよう最善を尽くします」


 こうして俺達三人は城をあとにした。そしてエイミーが探してくれた宿のロビーにあるテーブルに四人集まって、これからのことについて話し合いをすることに。


「……というわけで、国から正式にスラム捕獲を依頼された」


 俺がエイミーに城であったことを説明すると、エイミーは全員が考えていることを代弁するかの如く、俺に聞いてくる。


「そっかぁ。で、どうすんの?」


「そこなんだよな。俺達がしようとしていることはいわば人探しだ。でも世界は広い。そんな中でスラム一人を探し当てることなんてできるだろうか?」


 俺がそう言うと、俺を含む全員が「うーん」と腕組みをして黙り込んでしまった。

 そしてしばしの沈黙の後、一番に口を開いたのはミザリアだ。


「そういえば、人探しの魔導具があると聞いたことがあります」


「それ僕も聞いたことあるかも。まさに今の僕達にピッタリな物だね」


「俺は初めて聞いたな」


「私もー」


 さすが魔法使いの二人。魔法関連のことに詳しい。


「それでその魔導具はどこにあるんだ?」


「私が読んだ文献には、昼であっても陽の光が満足に届かないほど深い森の中、と書いてありました」


 それを聞いた俺の頭の中に、とある場所が思い浮かんだ。俺はその森に心当たりがある。名前は確か『常闇とこやみの森』といったか。



【次回、元勇者スラム側の話】

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