第8話 親友を探しに

【まえがき】


 あまりよくない表現だったらしいので、作品タイトルを少し変えました。読んでくださっている方、本当にありがとうございます!


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 ギルドの依頼で魔物討伐のため北のダンジョンに向かったフレンが、ギルドに申告した帰還予定日の夜になっても帰って来ない。あくまで予定日なので、一日くらいのズレならどの冒険者でもよくある話。


 でもフレンが向かったダンジョンは、Dランクパーティーでちょうどいいという危険度。フレンはAランクだから一人でも余裕なはずなのに、何かトラブルがあったのだろうか?


「ねえ、夜になっちゃったよ?」


 朝からギルドのエントランスのテーブル席で待つ俺たち三人のうち、一番先に不安を口に出したのはエイミーだ。


「そうだな……」


 さすがに帰還する時間帯までは申告しないから、厳密に言えば23時59分までは今日だ。だからってこのまま待ってるのも落ち着かない。もしかすると帰還できない状況になっていることも考えられる。


 帰還予定日から二日経っても帰って来ない場合は、ダンジョンの近くにある国家騎士団の詰所つめしょから、騎士団が派遣されての捜索が始まることになっている。


 二日も経ってからじゃ遅いと思われるかもしれないが、騎士団の人数には限りがある。それよりもはるかに多い冒険者全員に気を配るのは難しい。


 それに騎士団は騎士団で前例は無いが、万が一ダンジョンの外に魔物が出て来た時などに、一番に対応するなどの役割もあるのだ。


 もとより冒険者は危険を承知でなる職業。帰還予定日の申告というシステムがあるだけでも、冒険者を大切にしようという国の姿勢が垣間見えて、俺は悪い印象を抱いていない。


「探しに行きますか?」


 ミザリアも心配そうに俺を見ている。もしフレンに何かあったのだとしたら、一秒もムダにできない。


「よし、俺達も今すぐ北のダンジョンに行こう」


「そうこなくちゃね!」


「やっぱりお兄様は私が見込んだ通りの人ですっ!」


 二人も喜んで同意してくれた。おかしなところはあるが、二人とも悪い子じゃないとは思っていた。


「そうと決まれば俺達も正式に依頼を受けよう」


 三人で受付に行くと、朝来た時と同じお姉さんがカウンターの向こうに立っている。今日俺達が来てから12時間は経っているというのに……。昨日もいたし、もしかしてここはブラック職場なのか? そういえばこのギルド支部の依頼受付はこのカウンターしかないな……。


「すみません、俺達も北のダンジョンの魔物討伐依頼を受けます」


「えっ!? あなた方はDランクお二人にAランクお一人ですよね? それならもう少し難易度の高い依頼を受けられますよ?」


「そうなんですけどね、人探しなんですよ」


「あっ、昨日おっしゃっていましたね。確かフレンさん、でしたか?」


「はい。万が一ということもありますから。自分より下のランクの依頼を受けるのは問題ありませんよね?」


「ええ、大丈夫ですよ。ではこちらの書類に必要事項を記入して下さい」


 俺は渡された書類にメンバーの情報や帰還予定日を書き、お姉さんに渡した。


「はい、受理いたしました。ところでさっきから気になっていたんですけど……、そちらの女性は冒険者ではなくてメイドさんなのでは?」


 お姉さんがエイミーを見て俺に聞いてきた。うん、気になるに決まってるよな。だってエイミーは今日もメイド服なんだから。そのせいで今も他の冒険者の視線を集めている。


「お姉さん、気にしたら負けです。それよりも仕事のしすぎで体調を崩さないように気をつけて下さい。応援してます」


「えっ? ご、ご心配ありがとうございます……?」


 とまどうお姉さんに見送られながら、俺達はダンジョンへ向かうべく夜道を歩き出した。

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