貞操観念が逆転した男女比1:1000のエ〇ゲの悪役貴族に転生した僕はゲーム本編に関わらないつもりが、ヤンデレと化したラスボスを拾っちゃったんだけど、どうすればいいと思う?

リヒト

序章

プロローグ

「いや、胸糞悪……」

 

 僕はエロゲのクリアの画面を見て、そう呟いた。

 

「いや、あの……この胸糞の悪さは求めていないんですけど?」

 

 僕は釈然としない気持ちを抱きながら呟き、パソコンを操作してエロゲの画面から掲示板の画面へと切り変える。

 3ch。僕が愛用している掲示板である。

 

「……ちっ。一番じゃなかったか……まぁ手こずったからなぁ。10位以内に入っていると良いんだけど……」

 

 僕は早速建てられているスレッドに参加する。

 そのスレッド名は『最速でエロゲを踏破せし、紳士たち』だ。

 

 ■■■■■

 

 18:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 クリア完了!クリアシナリオはA。


 19:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 お?これで9人目ですな。一桁台は埋まりましたな。


 20:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 おめー。


 21:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 しゃぁぁぁぁぁぁ!あっぶねぇ。一桁台耐えたぁ。

 

 22:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 おや?もしや紳士四大師様?


 23:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 おうとも。


 24:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 ちっ。三大師になるにはまだ先か。


 25:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 残念でしたー。他の人がクリアしたシナリオは?こちとら思わぬ鬱展開を食らったのだが?


 26:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 案ずるな。今のところ全員それだ。


 27:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 マジで?どんな確率よ?原作崩しもそうなん?


 28:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 そうだってね。今回も頑張って意味のわからない行動をとったつもりだったんだけどね。


 29:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 今んところは全部シナリオAとか、あれじゃね?最初はシナリオ固定……?

 

 30:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 そうだと思われる。よほど運営はあの鬱エンドを見せたかったようだね。


 31:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 いや?一応あれはハッピーエンドだぜ?


 32:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 いやいや!それはない!お題に対して、明らかに見合っていない酷さだよっ!何で男女比逆転の、明らかにコメディ風のエロゲであんな鬱を頂戴されるんだ。いくら何でも酷いだろ!特にあの悪役貴族は何?一人でお辛い目にあい過ぎでは


 33:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 それな。


 34:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 それな。


 35:エロゲ好きの紳士たち:2022/3/12(土)

 それな。じゃあ僕は他のシナリオをクリアしてくるわ。

 

 ■■■■■

 

 僕は掲示板へと、そう書き込むとゲーム画面へと戻す。とりあえず他のシナリオを全部クリアしないとな。

 ちなみに紳士四大師とは、スレに上がる主要なエロゲの最速クリアで必ず一桁台にいる猛者たちのことであり、更に言うなれば、その一角が僕である。

 

「よっと」 


 なんて、そんな実に馬鹿らしいことを考えた僕は己の喉の渇きに従い、自分の部屋からリビングの方に降りていく。

 無駄に広い一軒家。

 そこには、自分以外の気配は特にない。

 無人の家を歩き、リビングの電気をつけ、ダイニングキッチンの方に向かって行く。


「……うま」


 冷蔵庫の中に入っていたエナドリを一気に胃の名へとあおり、己の体にエネルギーを与える。


「さて、と」


 エナドリを摂取したことだし、このままエロゲへと戻ってもいいが……お腹も空いている。

 このまま夜ご飯も作っておくか。

 ちょうど、一作をとりあえずクリアしたことだしな。


「ふんふんふーん」


 僕は鼻歌を歌いながら、料理を作り始める。


「あー、お塩向こうじゃん……取りにいかないと」


 料理を作り始めてからしばらく、今になってお塩がテーブルの方にあることへと気づいた僕は料理の途中で、テーブルの方に向かって行く。

 ここで、言い訳させてほしいのは今日、僕が三徹目で意識が朦朧としていた中、料理をしてしまっていたという状況である。

 しかも、油ものを。


「あっ」


 ふらついた足元でキッチンを進んでいった僕は自分の手でうっかり、煮えたぎる油を熱していたお鍋を倒してしまう。


「……あっ」

 

 そのお鍋が向かう先は僕だ。

 一直線に、真っすぐと、お鍋の中にある油が僕の方に向かってきて……そして、それは間違いなく僕の体にかかってしまう。


「ァァァァァァアアアアアアアアアアっ!?」

 

 煮えたぎる油を、真正面から受けて、無事いられるはずもない。

 一気に『何か』が広がっていくことを感じる僕は、それと反比例するかのように本来あるべき自分の感覚が喪失されていくのを味わっていく。

 あぁ、死ぬな。わかってしまった、もう駄目だと。

 痛みが消える。

 あぁ……そっか、僕は、死ぬのか……。

 ───ただ、塩を取りにいきたかっただけなのに。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る