第73話   不採用

社長が「これからシステナリア社の面接を行わせていただきます。私は社長9代目の野田と申します」と話し掛けた。

野田が「はい、まずはそちらから」と声を掛けられて、カズキが「はい。私は、カズキと申します。こちらの会社に入ろうと思ったのは、沢山の人達の困りごとを解決しようと思ったからです」と話をした。

面接で慣れないのかスーツを着て重たく感じていた。

社長が「君は母親が居るかな?」と訊ねられて、カズキが「母親は居ないです」と恐縮しながら答えた。

社長が「君に母親が居ないと言う事は、教養や協調性に欠けてしまうだろうね?」と残念そうな顔をして居た。

次の日、システナリア社からの手紙が家に届いた。

手紙には「弊社では、髪の乱れは心の乱れとあります。カズキ様、あなた様の事を考えますと、弊社の方針からしてもお客様の困りごとなどを解決する為には、真面目で根が優しいと言う事が前提です。残念ですが、今回は見送らせてください」と言う内容が送られてきた。

カズキは「何で何だよ。僕も此処で働きたかったのに」と涙を流していた。

カズキは仕方なく、髪の毛の金髪を黒に変えたが、言葉の節々に優しさを感じられない自分に嫌気がさしていた。

ユキヒロが「しょうがないさ。優しさって言うのは、両親から学ぶもので俺には奥さんが亡くなってしまったからカズキには苦労を掛けたと思う」とがっかりした様子で話をした。

カズキが「そんなの分かって居るさ。僕だってどうしていいのか分からないのに」と頭を抱えて居た。

ユキヒロが「大丈夫。お前にはお前にしかできない事が有るさ」とカズキを励ましていた。

そんな矢先、仕事に就けないカズキがハチミツ農家の手伝いを始めた。

ハチミツを運んでくる、蜂を飼う箱を作り、ハチミツを採取してハチミツを瓶に詰めた。

そんな毎日を送るある日、ナナミが「あのお兄さん、ハチミツで何かおすすめはありますか?」と笑顔で尋ねて来た。

カズキは「あの、このハチミツで作ったプロポリスが有るんですが、こちらの商品がおすすめです」と答えて取材を受ける事も有った。

カズキは「取材ばかりで嫌になるな。でも、確かに取材来るから人は多くなって来たし、人気になって来たけどな」とハチミツ農家を初めて、カズキの久しぶりに見る笑顔が誇らしく見えた。

そんな折、カズキの父がくも膜下出血で倒れていた。

カズキが「父さん、大丈夫か?」とユキヒロに声を掛けたが応答も無く、ユキヒロはベッドの上で安らかに眠っていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る