朋美の兄 祐樹編 第五章
妹が生まれた。
三歳差の妹だ。俺が中三のときは朋美はようやく小学校を卒業した新入生として入学してきた。生徒会長だった俺は新入生への挨拶を読みながら朋美の様子を見ていた。朋美は腰緊張しながら真新しい制服を着ている。
「なんで生徒会長なの?」
「小学校の頃、実行委員していたからその名残」
小学校に生徒会はない。そもそも小学校は生徒ではなく児童という区分になるが、自治権が無いわけではない。ただ委員会がそれぞれあって、その総合的な連絡役みたいなポジションが実行委員だ。それぞれの委員会が集まり、体育館で予算と活動内容の発表を小五と小六がやり、その下の学年はそのやり方を見て、次期、実行委員になる。
昨日の夜、リビングに居た朋美はそう聞いてきた。
「中学って、そういうの気にするの?」
「まあ、中学っつても実行委員と比べたら自治権大きいからな。その分、責任も大きい」
「やっぱり、前の会長からの推薦て大きいの?」
「大きいな。前の会長から副会長推薦されて選挙に出たからな」
「自民党みたいだね」
「だいぶ違うと思うぞ」
利権政治と利権はないが生徒が純粋に責任持って統治する生徒会では雲泥の差だ。純粋という意味で。
「でもお兄ちゃんモテるよね」
「はあ?」
「いやいや、お兄ちゃん結構人気あるよ。小学校でもチョコたくさんもらったでしょ」
「全部断った」
「なんで!?」
「いや、実行委員がお菓子もらうわけには行かないからな」
「先生だって、バレンタインのときは目を瞑るよ。私は貰ってたよ」
「だれから」
「え」
「お前がチョコ貰ってたなんて初耳なんだが」
「ああ、えっとね、クラスの友達」
「男? 女?」
「女の子」
「ならよし」
「おい!」
妹に変な虫がついたら駄目だからな。
「まったく過保護だな、私が嫁に行くときはどうなることやら」
「行かないもんな」
「ええ、結婚できないの」
「朋美は女の子に嫁ぐから大丈夫よ」
リビングに母親が入ってきた。
「どういうこと?」
母さんは洗濯物をリビングでたたむ。俺もやる。
「朋美は女の子しか友達がいないから、幼稚園の頃、あゆみちゃんと結婚するって言ってたよね」
「あのね! 幼稚園の好きと結婚は同義だから。友達の好きと区別ついてないから!」
羨みが真っ赤になる。
「そういえば俺も夏樹くんのこと好きだって言ってたような言わなかったような」
「ねぇ! この天然のお母さんと会話合わせなくていいから」
「私もね若い頃はともこさんと付き合ってたわ」
「知りたくないからお母さんの百合時代なんて!」
確かに親の百合時代は知りたくないものだ。百合に抵抗在るとかないとかではなく、単純に親のそういう話は気恥ずかしいもので、できれば聞きたくない。
「それで、朋美は誰か好きな女の子居るの?」
母さんが聞いた。
「なんで女の子!? 確かに女しか友達居ないけどな!」
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