ハッピーバースデー トゥー ユー 

ラングロール

前編1

今日、この日が俺の人生で最幸の日だと後の俺は思った。


俺がもうじき中学2年になるという時期に両親から養子を迎えると聞いた時は驚いたが、改めて今日、その妹になる養子の子が来ると聞いて俺は、とても緊張していた。


俺は、緊張を解すために2階にある自室からリビングに向かい、水を飲んでいた。

「今日来るんだよな…………仲良くできるかな」

俺が不安を漏らしていると、玄関の方からガチャッと音が鳴り、声が聞こえる。

「「ただいま」」

「お邪魔します。」

聞き慣れた両親の声と知らない少女の声が聞こえた。

「蓮華ちゃん、もう私たちは家族なんだからただいまで良いのよ」

「た……ただいま」

「「おかえり」」

そのやり取りの後、玄関からリビングに続くドアが開き、両親とカラスの濡れた羽のような艶やかな黒髪を持った小柄なかわいい少女が入ってきた。

「おかえり」

俺は蓮華ちゃんに向かって、できるだけ気持ち悪くないように笑顔で言った。

「…ただいま……です。」

蓮華ちゃんは、視線を彷徨わせながらも言葉を返してくれた。

「蓮華ちゃん、この子が今日から蓮華ちゃんのお兄ちゃんになる。充人お兄ちゃんだよ。歳も蓮華ちゃんの1つ上だから仲良くしてあげてね。」

「…よろしくお……お願いします。」

母親が俺を紹介すると、蓮華ちゃんはたどたどしく挨拶してくれた。

「これからよろしくね、仲良くしようね」

そんなやり取りをしたのを昨日のように覚えている。

蓮華が来てから月日が経ち、俺は中学3年になった。

今の俺は高校受験の真っ只中で、今も自室で深夜0時を超えて勉強していた。

勉強机に向かいながら唸っていると、自室のドアがノックされた。

「お兄ちゃん、お夜食作ったけど食べる?」

蓮華の声がドア越しに聞こえる。

蓮華は、我が家に来てから最初の内は、両親のことをお母さん、お父さんと呼んでいたが、気づけばパパ、ママ呼びになっていた。俺のこともお兄さん呼びからお兄ちゃん呼びになった。

初めてお兄ちゃん呼びされた時は、嬉しすぎて蓮華の頭を撫ですぎてしまい、赤面させてしまった。

あの時の顔が可愛すぎて、今でも覚えている。

最近、自分にはシスコンの気質があるのではないかと思う。

まぁそんなことはどうでも良い。

「食べる!」

ドアを開けて蓮華に言った。

「しぃ~パパとママは寝てるんだから、静かにね」

「おっと、蓮華が作ってくれたことが嬉しくてつい声が大きくなってしまったよ。それで、下に降りれば良いのか?」

「うん、私が作ったから美味しいと思うよ。期待して良いからね。」

「それは楽しみだ。作ってくれてありがとう、蓮華。」

2人でリビングに向かうと、2つのカップラーメンが置いてあった。

「蓮華や蓮華、説明してくれんかね。これは、何だい?」

「お兄ちゃんこれはね、カップラーメンっていうの、お湯を注いで少し待てば、美味しいラーメンが食べられるっていう画期的な食べ物だよ。」

「それは分かってるんだけどね、さっき蓮華の手作りって言ったよね。もしかして、即席麺やインスタントの物を手作りって言っちゃう子になっちゃったかな?蓮華ちゃん」

そう言うと蓮華はムッとなった。

「距離感じるから名前呼ぶときは、蓮華ちゃんじゃなくて、蓮華って呼ぶって決めたでしょ。お兄ちゃん」

「分かったよ蓮華、そして、そろそろこの良い出汁の匂いについて教えてくれないか?」

「ふっふっふっどうやらお兄ちゃんは鼻が利くようだね。ちょっと待ってて今持ってくるから」

そう言うと蓮華はキッチンの方に向かい、お盆にのった2つの茶碗蒸しと4つのおにぎりを持ってきた。

「おにぎりの具は、明太子と昆布だよ。そしてこちらが出汁の匂いの正体の茶碗蒸しで~す。」

「おぉ~茶碗蒸しなんてどうやったんだ?レンジでやったようには見えないな。てか、めっちゃプルプルしてるけど、家に蒸し器なんてないよな?」

「ふっふっふっやり方次第でどうとでもなるのだよ。お兄ちゃん」

蓮華は自慢げに笑っていた。

「まじか、後でやり方教えてくれ」

「え~やだぁ、食べたいときは私に言って」

「え~ケチ」

「ほら、冷めちゃうから食べよ。せ~の「いただきます」」

おにぎりと茶碗蒸しはとても美味しかった。

それと、今更だけど蓮華を甘やかしすぎているなぁ~と思った。

まぁ変える気はないけどね。

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