生きてるだけで

ああ。もう、いや。こんな生活。いやです。

上司に怒られ、彼氏は寝取られました。


もう、いやと言えば、

『生きたくても、生きれない人がいるの』『いいことがきっとあるから』

ばっかり。

いつ来るか分からないいいことまで、苦しめと。

お前は何様ですか。



こんな、人生ハズレです。

下の下。

そうです。そうでした。普通の体にすら生まれれない私なんて、故障しているようなものです。

故障したのは捨てないと。


狭い部屋を彷徨えば、包丁がありました。

あいにく、買って指で数えるぐらいしか使わなかった、それは切れ味が良さそうです。

どう握るのでしたっけ。まあ、滑らせばいけるでしょう。

首に近づける。


あれ?

動かない?


『やめて。死なないで』


誰か、いる?

後ろを振り返るとゆーくんがいました。

さしぶりに見えたゆーくんはあの頃と変わっていないと思います。


「離してくれない」


『やだよ。だって、離したら切っちゃうでしょ?』


「あなたもあいつらみたいに偽善者ぶるの?」


『仕事できなくてもいいの』


「何言ってるの」


『彼氏取られても復讐なんて考えなかったでしょ。えらいよ』


「だから、何よ」


『生きるだけで偉いよ』


「私、そんな幼稚に見えるわけ?あの頃と一緒だと思ったわけ?

病にかかり、生きるか死ぬかを彷徨ってきたあの頃のように。

素直に信じるって思ったわけ!?」


『生きてるだけで偉い。だから、偉いの。幼稚でもなんでもないよ』


「意味がわからない」


『生きてるだけで、えらいんだよ。よくがんんばったね。でも、私はあなたがここにくると悲しいんだ。ごめんね。君にはまだここにいて欲しいんだ』


その声を聞いた後、視界が真っ暗になりました。

でも、どこか温かいと思いました。

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