第20話 目に映るもの
1 完
昔いつも目線を絶対に合わせようとしない子が居ました。どうして目線を頑なに合わせようとしないのだろうと自分たちは思っていました。中にはその子を無視したり揶揄する子達も少なくありませんでした。
実際先生とすら目線を合わせないような子だったので。
ただその一点を除けば何処にでも居そうな子だったので僕たちはその子をそんな風に扱ったことはありませんでした。
しかし、それも長くは続くことなんてありませんでした。きっかけはいつだったかはっきり思い出すのは難しいのです。ただ言えることは彼女がじーっと目線をやった子が相次いで些細とはいえ怪我が立て続いたせいです。滅多に目線を合わせない彼女が目線をやった結果怪我をした、子供故に幼稚な思考が出した結論はあの子に見られると殺される、怪我をさせられる。きっと死神なのだと同級生が騒ぐようになっていったこと。
彼女の周りには良くないことが起きるそういう噂は彼女を孤立させていきました。
彼女も気にしないわけないのです。髪をのばし目が隠れるほどに。そして最後に彼女は奇妙な自殺をした。鏡を前に首を吊って亡くなっていたらしいと風の噂で聞きました。
日記には真っ黒な人を模した何かが何度も書きなぐられていたのだ、と。
彼女は両親共に居ない家庭だったと後になってしりました。彼女を産んで直ぐに突然亡くなってしまったらしいのです。父親は彼女が小さな頃に事故で。それからは彼女が親戚とも目線を合わせなくなったとんだと。彼女の祖父母が嘆いていたのだそうです。
彼女の目には何が見えていたのか。何故目線を合わせ無かったのか。今となっては知るすべがありません。
思うのです。最後に目線を合わせたのは彼女が鏡越しに自身を見てしまったのでは無いかと。
彼女は目線を合わせ無かったのではなく目線を合わせたくても合わせることができなかったのではないか、そう思うと酷いことをしてしまったと反省しています。
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