第19話 海からやってくるもの
1 完
うちの地域ではお盆以外は(漁師とかそういうの以外)海に近づくなと幼少から言い聞かされたものである。
理由は未だに良くわからない。親もそのまた親もそう言われて育ったからとか。
祖父母、特に祖母は強く言い聞かせようとしていたことを今でも思い出す。だからわざわざ近づいてやろうと思う気持ちもわかなかった。ピシャンと怒るような言葉が焼き付いて離れなかったからと言うのも大きい。
そんな祖母も数年程前に他界した。その時も海に決して近づいたら行かんと俺の手を強く握り死ぬ間際まで言っていた。
良くないものがやってくるとだけ。
祖母の死からまもなく祖父は死んだ。弱りきっていたのだと思う。祖父は祖母の死後、家を出て徘徊することが多くなった。その大半は海の近くで発見されたと聞いた。さて、祖父は何故おそれていた海へ近づいたのだろうと俺は思う、と言うのも徘徊が酷かった祖父も祖母の死からまもなく死んでしまったからだ、海の近くで発見された時には亡くなっていたんだと。
実はうちの地域では大人特に年寄りが徘徊し、海の近くで見つかったという事例はやたらと多い。お盆以外に海に近づくなというのにだ。
祖母が亡き後、祖父はことあるごとにこんなことを言っていた。ばあさんが呼んでいる、と。
良くないものとは一体何だったのか。どうしてお盆以外に海に近づいてはならなかったのか。今も俺にはわからない。
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