千の夜〔完結〕

入江 涼子

序章

第1話

 今は夏。暦の上では、そうだけど。

 あたしはげんなりだ。人生の冬って、こういうものをいうんだろうか。

 今の女性の成人式である裳着の式を終えた十四歳の頃あたりから、いろいろ胡散臭い話が飛び交っていた。ところが、十五くらいになって、年が明けたと同時に、はっきりと結婚の話が来だした。公達(きんだち)からの文がうっとおしいほどに、届けられたのであった。

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