第7話「作戦決行」


____日曜


「侑くん、夜子ちゃん、甘楽くん、怜くん。そして…」


作戦決行日、朝。

みんな智早さんの家に集まっていた。


「光ちゃん」

「なんであたしまでやらなきゃいけないのよ…」

「君の能力、ほぼチートだからでしょ。深い理由ならあそこのノンデリ刑事に聞いて」

「おい有村、ノンデリとはなんだ。」

「人の部屋でタバコ吸うのやめて貰えます???だからノンデリって言われるんですよ???あーもう匂いつく!!!」

「一応言うけどノンデリカシーの略ね。あんたにピッタリよ。」

「はい、侑くんたちも飽きて俺の部屋物色しだしてるから。」


銀髪たちに止められながら本棚を物色していると隠れている棚を見つけた。


「これ智早さんのエロ本?」


智早さんは一瞬固まって頭で処理したあと声を荒らげた。


「まってまってまってまってまってまって!!!!」

「へー、年上のよしよししてくれるお姉さんが好きなんだ」

「まって!!!!!まって!!!!!!!」

「有村さんも読むのね…しかも結構マニアックなやつ…」

「これが特殊性癖ってやつかー!!」

「桜田お前は見るな!!」

「覚えなくていいそんな言葉!!!!!!!!!!侑くん!!!!頼むから返して!!!!!!」

「えーと読み上げまーす、あ」


多分大穴場であろうシーンを読み上げようとした途端、怜に取り上げられた。


「侑、有村さんの尊厳破壊はもうやめてあげて」

「お前、有村さん今魂抜けてるからな」

「有村も男だから仕方ない」

「サポート方向違いませんかぁ…???」

「仕事はちゃんとやれよ」

「なぁ…はいはい……」


怜は元あった棚に本を戻して、智早さんも元の位置についた。


「えーと…あ、能力の使い方大丈夫?高野さんに教わった?」

「………教わってないんすけど」

「え?まってノンデリ刑事教えてないんですか????」

「…忘れてた。」

「は?俺メールしましたよね???!!」

「悪い悪い、今覚えてもらおう」


亮平さんは智早さんのベッドから腰を上げて


「眼に集中しろ、以上」

「そんな説明なら俺でも出来ますから!!!!!!」

「有村お前めんどくせぇな」

「は??」

「まあ、このおじさん達は置いておいて、いい?例えば…ものをずうっと見るとき、視線を動かさないでしょ?あの感覚よ。目に焼き付けようとする感じ。」

「なるほほー!!!」

「怜、よく分からなかったん………え、甘楽が2人いる」


怜にもう一度説明を求めようと目をやるとそこに怜の姿はなく、甘楽が2人いるだけだった。


「え?えっと僕が怜でこっちがホンモノの甘楽ね?」

「なんで俺なの?!?!」


すると能力をといたのか、甘楽から怜の姿に戻っていた。


「ほら、僕でしょ?」

「ほんとーだ…」

「怜くん覚えいいね…」

「光先輩の教え方が上手いんですよ」

「ほ、褒めても何も出ないわよ!!?」


じゃ、これで覚えたか。と亮平さんはタバコを吸い直して作戦の内容を話し始める


「…今やっと使い方分かったからな…。クッソ、じゃあ作戦を今変えよう。まず、俺と有村であいつらのPCを壊す。まぁ、あいつらの核はインターネットだからな。あと、あいつらも多分俺らのこと知ってる。だから人数で押し切ろうとするだろう。能力まではわからなくても名前と顔は知られていると思え。まぁ接触はしないがな。」

あたしたち見てるだけなの??」

「まあ、俺も今作戦聞いたけど…心配して損した…」

「突撃したいのか?銃いるか?」

「それで渡されるの弾入ってない銃なんで嫌です」

「銃は撃つんじゃなくて殴るんだ」

「銃は撃つものです。タダシイツカイカタシテ!ほら、銃も嘆いてます」

「有村さんそんな声出るんだ…」

「…有村さん、今日サムい冗談しか言ってないわよね。」

「今日メンタルのせいで無理そうなので後日でもいいですか?」

「逃げるな有村」


じゃ、と伸びをして亮平さんは智早さんのデスクのすぐ近くにあった椅子を引っ張ってきて智早さんの横に座った。

ああ、始めるんですね。と智早さんもキーボード叩き始めた。

少し経ってから、暇そうな亮平さんがきく。


「有村、今どんな感じだ?」

「急かさないでくさい、俺はロボットとかじゃないんで」

「急かしてるつもりないけどな」

「はあ…、まあ変化は出たと思います。音声聞きます?」


智早さんは付けていたイヤホンを外しパソコンの音量を大きくする。

パソコンから「リーダー、パソコンが起動しなくなった!」など、様々な言葉が飛び交う。

リーダー、というのはカルマのことだろうか?

様子見で、やつらの声を聞き続ける。


「…カルマ自身はここにいないっぽいね。自宅から監視してるって感じか。」

「…そうか。下っ端が可哀想だな。」


『リーダー!!どうすれば!』

『くっそ…め…!!あいつは前々から気に入らなかったんだ!もうそのパソコンもダメだ!!』


マルクス…?

智早さんのことだろうか?


『リーダー、マルクスはともかく…、というのは?』

『…ヘイズ?』


…?

マルクスが智早さんなのはともかく…。

ヘイズ?ヘイズは誰だ?

亮平さんのことか…?


「ヘイズ…初めて聞いた…。」

「マルクスは?」

「マルクスは俺のコードネームね。ヘイズ…もやってことか。これが終わったら調べることにするよ。で、どうやって殺すの?」

「限界覚醒を使う。」

「え?」


智早さんは分かりやすく目をまん丸にして驚き、亮平さんを見つめる。


「いずれ、こいつらも使うことになるし、こうやって能力を乱用するクソ野郎を倒すことになる。まぁ、説明はしないがな。」

「高野さんが…、使うんですか?どうやって?」

「俺の限界覚醒は遠くても通用する。カルマさえ殺せれば、周りのヤツらの洗脳は解かれる。カルマの再生能力だが…元々持っていなかった能力だったからか、効果は薄い。だったら再生するより先にやつの核をぶっ壊せば…、ジ・エンドだ。」

「…なるほど。でも限界開花は」

「いい。俺が数日動けなくなったくらいでお前らはどうせ困らない。」

「それはそうね。」

「少しは心配してくれないか?もうすぐ60なんだぞ。」

「あと8年あるじゃない」

「はぁ…、進捗はどうだ?有村。」


智早さんは付けていたイヤホンを片方だけ外して


「もう大丈夫です」


と、亮平さんの方をゆらりと見た。

亮平さんはそれを合図に「そうか」と一言だけ発して黙り込んだ。


「亮平さん?」

「みんな喋らないでね。」


智早さんはパソコンからイヤホンを外して音量を大にする。

亮平さんは黙り込んだままだが、少しすると亮平さんの身に異変が起きた。

亮平さんの頬にあった傷がすこしずつ開いてきている。

それはやがて完全に開いた。傷の場所にあったのは肉体ではなく、目だった。それは周りをぎょろぎょろと見渡していて、その様子がとんでもなく不気味だった。


そして、亮平さんは一言、


。」


それを放ったとき、智早さんのパソコン越しにグロテスクな音が響いた。


「終わりだ。」


「えーーっ!!!すごいすごい!!りょーさんかっこいーっ!!」

「数日は俺の事あてにしないでくれ。あとは任せた有村。」

「はぁ…わかった。これでカルマたちの動きは止まった。今回はもう終わり。君たち全員を呼んだ意図は高野さんにしか知らないけど、もう帰っていよ。なにかあったら後日連絡するよ」

「はーい!!ちはちは、りょーさんお疲れ様ー!」

「うん、お疲れ様」


こうしてこの任務は簡単に終わり、玄関からでようとしたころ部屋から声が聞こえた


「有村、動けん」

「俺後始末あるから光ちゃん送ってってあげて」

「絶対嫌だわ。」


本当に頼れなくなってるな…。というか…嫌われすぎでは…?

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