彩りの天弓魔女

雪水すや

第1話

第一章「異世界」



 部屋の窓辺から差し込む、柔らかな陽の光で

目が覚めた。

今日はアラームなしで起きられたな。

今、何時くらいだろう?そう思って、ベッドから

起き上がろうとした時、



、、、?


わずかな違和感が少し遅れてやってきて、すぐに、続けて大量の違和感の大渋滞。


そして私は大きく、声に出す。


「ここって、、、どこ、、!?」


知らない部屋に、知らない家具たち。

そして、少しだけ開いていたこの部屋の窓を

大きく開けて見えたのは

広がる未知の、美しい景色。

遮るものが何もない空は、とても綺麗な青で澄み切っていた。

ここがどこなのかは分からない。

けれど、これだけは確信した。


「ここは、、私が住んでいた国じゃない、、、だって、、」


だって見えた景色の中に、、


ほうきに乗って、空を飛ぶ人々が。

遠くの空に見えたドラゴンのような生き物の大群が。


この部屋から見えた情報だけで、ここは、私が元より住んでいた日本ではないと、分かってしまった。


”魔法“がある世界、、?


それってつまり、、


「私は、”異世界“にやってきた、、!?」



ー。

 状況がまるで読み込めない中、この世界での

当たり前は、私のことを待ってはくれない。

ここはおそらく、2階建ての家のようで、私は下から階段を登ってくる足音に、身を構える。

誰か来る!

その時、私はとっさに、、。



、、、、っ寝た振りしよう!


現実から目を背けることにするのだった。

頭の中がかなり混乱していたので、しばらく一人にしてほしかった。寝て起きたら、元に戻るはずさ!なんて考えて。

やけにリアルな夢だったなぁ、なんて感じて普通に目を覚ましますように!

それではGood Night!


それは甘いですよと、言われるより先に体感する。


??「プラズマ·ライズ!」


私「キャアアアア!!!」


??「やっぱり、起きてたのね、ベルちゃん」


身体に微弱ではあるものの、電気と謎の振動ようなものを感じて、狸寝入りは、あえなく失敗する。これは魔法、、?そして私にその魔法(?)

を施した彼女はどうやら、、、


??「ベルちゃん、おはよう〜!

ママの素敵なモーニングマジックは気に入ってくれたかしら?」



どうやら、私のママのようです。モーニングコールならぬ、モーニングマジックですか!?



 彼女と共に、一階の部屋に降りた私は、改めて元のいた家ではないと実感する。

見知らぬ家の香りがする。

これは、、、植物の匂い、、? 鼻先に、様々な香りを感じる。

 そして何より、明確に違うことがある。

テレビやエアコンといった、家電機器がないのだ。

そして、大きなほうきと、おそらく魔法用?の杖 が、部屋の壁の中央に何本か立てかけられているのが見えた。

 

 そして、壁に嵌(は)められている、美しい

宝石が散りばめられた装飾の鏡に映った“私”を見た私は、自分の容姿に驚いた。

私の髪は全体的に、桃色がかった淡いピンク色で

瞳の色は水色だったのだ。


 すごく可愛い。。。なんだこの美少女は!?


一瞬、この状況すら忘れそうになるほど驚いていたその時、ふと、部屋の壁にいくつか飾られている家族写真が目に入った。

その内の一つの写真の真ん中に、おそらく幼少期の“私”と、隣に写る人物がいた。写真には、あまり綺麗とはいえない、字を覚えたての子供が書いたような、文字があった。

写真に写る、この世界の私の母親のような女性の横に

「thread(スレッド)」

と書かれていた。

 

 私が写真を凝視していた時、私をモーニングマジックなるもので起こした彼女は、朝食を用意してくれていた。

少し年季の入った、3人掛けのダイニングテーブルの椅子に座っていた私は、

落ち着かない状況の中、まずは目の前の彼女のことを知りたくて、少し緊張をしながら問いかける。


私「えっと、、ス、、スレッドさん、、?」


??  「!!」


私に名前を呼ばれた彼女は驚いて、かき混ぜていたスープを作る手を、一度だけ止めた。


スレッド  「なぁに〜?ベルちゃん。ママのこと、急にさん付けで呼んで。びっくりするじゃない。


彼女は微笑んでから、再び、スープを作る手に戻った。


私の母親の名前が、「スレッド」さんというのは本当のようだ。

彼女は、焼き立てのレーズン入りのパンと

トマトスープを朝食に出してくれた。 

とてもいい香りがする、、。


私「いただきます、、」


 こんな時なのに、いつもより、お腹が空いていた私は、少し遠慮がちにではあるが、ありがたく

朝食をいただくことにした。

初めて食べた味のはずなのに、一口食べてすぐに、大好きな味だと感じた。


 そして、私は【ベル】という名前のようだ。

頭がずっと混乱していて、私はこれからどうやって生きていけばいいのかを考えていた。 、

右も左も上すら下すら、何も分からない世界で、、、。

 

 難しい表情をしている私のことを気にかけてくれて、先に朝食を済ませたスレッドさんは、私に尋ねてきた。


「ベルちゃん、何か悩んでるの?眉があがったり下がったり、なんだか落ち着かなくみえるわ。」


彼女は、私を元気づけようとしてくれているのか、自身の眉に手を当てて、少しお茶目に動かして見せた。


― いっそのこと、今の私のことを打ち明けてしまった方が良いのでは?


私の中に、そんな一つの考えが浮かぶ。


このまま、偽っていてよいのだろうか。

本当の娘だと信じて、優しく接してくれる彼女を騙しているような気がして、なんだか心地悪くて。


悩み、考えたのは一瞬だった。

私は決意して口を開く。


ベル「あ、あのね!ママ、、。いや、スレッドさん、、!」


なにやら、いつもとは違う私の雰囲気を読み取ったのか、スレッドさんは、私の顔から目を逸らすことなく、その優しい顔で、話を聞く姿勢を取ってくれた。


ベル「私ね、、その、、うまく伝わるか分からないのだけど、ついさっき、この世界に来たばかりで、、。見た目はきっと同じかもしれないけれど、あなたの、、娘じゃないん、、です、、」


 彼女にとって、娘の、思いもよらない告白だっただろうに、彼女は少しだけ目を見開いたが、

落ち着いて私に声を掛けてくれた。


スレッド「ふむふむ、、そうだったの、、。

言われてみれば、ベルちゃん、いつもより緊張しているようにみえたのはそういうことだったのかしら、、。打ち明けてくれてありがとう。でも、ー」


彼女は、私に優しく言葉を続けてくれた。


スレッド「でも、あなたは私の、たった一人の

愛娘よ。それは変わらないわ。何があっても。」


    そう告げてくれた彼女の言葉に、

        私の心はまた、

一つの火が灯されるように、暖かくなるのだった。

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