第80話
鰹節の香りに誘われて茂みの影からぞろぞろと猫達が顔を出す。
出てきた猫達にお礼をあげ終わると私とレイトさんは立ち上がって公園を後にした。
「公園に通ったら僕もカツラさんに触れるようになるかな?」
「なれます! 今は出てこなかったけど、子猫も居て可愛いんですよ」
「フフッ、それは是非とも見たいな。今度、店が休みの日に公園でモデルをすると言うのはどうですか?」
不安げな表情で首を傾けてレイトさんは覗うように私の顔を見ている。
私はただでさえ喫茶店終わりに時間を割いてモデルをしてもらってるのだ。
休みの日までいいのかな?
頭の中で考えこんでいると、レイトさんが私の顔を覗き込む。
「予定もあると思いますし……言ってみただけなので、そんなに悩まないで下さい」
申し訳なさそうに自分の頬を指で掻きながら寂しそうに笑う。
私はそんなレイトさんの表情に慌てて首を振った。
「嫌だとかそんなんじゃないです! 喫茶店がお休みの時までだと、レイトさんが疲れちゃうじゃないかと思って」
必死に自分の気持ちを口に出して伝えるとレイトさんも首を横に振る。
「疲れなんて! 店が休みの日は何をしていいのか困ってしまうんです……」
顔を赤らめて話すレイトさんと目が合うと、なんだかくすぐったいような気持ちになって二人で笑ってしまう。
「それじゃ、今度のお休みには公園でモデルお願いします」
頭を下げてお願いする。もう先方にはまたたび荘が見えていた。
ここでいいと挨拶しようとする私にレイトさんが先回りして口を開いた。
「部屋の前まで送らせて下さい」
なんでも分かってしまうんだなと驚きながら、私は直ぐに頷いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます