第10話

村田君の友達も気さくな感じで、私と雪絵は楽しくて会話が弾む。





「次、体育だしそろそろ戻らないとヤバイな」





 昼食が終わった後も村田君の友達も交えて話していれば、

いつの間にかもう少しで昼休みが終わる時間になっていた。





「そろそろ、私達も戻ろうか」





 全員立ち上がり村田君たちは「またね」と挨拶を交わして空いた食器を持って先に歩いて行く。



 私と雪絵も空になったお弁当箱を持って歩き出すと、食器を下げ終わった村田君が走って戻ってきた。





「あのさ、ちょっといいかな?」





 話しかけられて何かと首を傾げていると、雪絵が私の肩を叩いて「先に行ってるね」と一人残される。



一人にしないで欲しいと思いながら、目の前にいる村田君を無視する訳にもいかず向き直り要件を聞いた。





「あの、突然なんだけどクリスマスって予定ある? よかったら遊びに行かない?」



「えっ!?」





 もちろんクリスマスに予定などないけど、一緒に過ごしたい烏はいる。



 烏はクリスマスを知ってるだろうか?



 会えなくてもプレゼントをベランダに置いておくとか――





「小陽ちゃん。急な誘いだし、返事は今すぐじゃなくていいから考えといてよ」





 烏のことを考えていて直ぐに返事をしない私に村田君は爽やかな笑顔で言うと、手を振って走り去ってしまう。




 返事をするタイミングを逃した。




 誘いは素直に嬉しいけど、特別な日はやっぱり特別な相手と過ごしたいよね。



 私は溜め息をついて自分の教室に急いだ。

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