一羽
天狗の山
第1話
天狗の山は今日も平和な朝を向かえた。
烏の朝は早い。
朝食を済ませ直ぐに烏天狗の右京のもとへ飛んでいく。師匠の右京は相変わらずのぐうたら。
「お前、酒を飲む以外にすることないのか?」
「烏も毎日、小言ばかりうるさい奴だねえ。毎日来なくてもいいんだよ」
寝転がった体を起こし、うんざりした顔を見せる右京。
烏が烏天狗になる為には、師である烏天狗の力が大きく影響するのを知っていて嫌な奴。
俺がちっとも烏天狗になれないのは、右京に原因があるんじゃないかと疑いたくなる。
「俺が烏天狗になれないのは、ぐうたらな師匠のせいだと思ったろ?」
俺は羽をばたつかせて曖昧にごまかすが右京は目を細めて意地悪そうに笑う。
やたらと勘が鋭くて油断ならない。
「烏に良いこと教えてあげようかと思ってたのにどうしようかなぁ? 小陽ちゃんも喜びそうなことだけど」
「何? 小陽が喜ぶ話ってなんだよ?」
右京はニヤニヤと笑うだけで話そうとしない。
こうなると長い。右京も暇を持て余しているので、いつまでだって俺をからかい続ける。
だけど、俺だって少しは学習してるんだ。
「師匠のありがたい話を聞かせて下さい!」
褒めてもちあげる。そうすると右京は気分が良くなる。
案外、単純。
俺が腹の中で笑っていると、それを見透かすように右京が冷たい視線を向けていた。
「全部、顔に出てるよ……まだまだ修行不足だねえ」
つまらなそうに右京が溜息をつくと、俺の体からはどっと汗が流れた。
ば、バレてる――
「まっ、いいや。烏はクリスマスって知ってるかい?」
「くり? くりす……ます?」
聞いたことのない言葉。小陽が喜ぶって食べ物か?
首を傾げていると、右京は酒を一口飲んで話しはじめた。
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