第79話
「びっくりした」
プリンターで印刷した紙を手に取り、海人が優衣に言う。
「ごめんなさい」
優衣は思わず謝ってしまう。
海人は優しい表情で首を横に振り、「これ、もらったんだね」と優衣にその紙を見せた。
紙には、優衣に外出許可が出された事、初めて外出した事が記されている。
「これ、私のだったんだ」
優衣は少し嬉しく感じた。
海人が自分の事で仕事をしていた。
「初めての外出だから、ノートに貼って置こうと思ってね」
「そうなんだ」
海人は眼鏡を外し、胸ポケットに入れる。
眼鏡の事を聞こうとした時、「今日のカウンセリングはどうする?今、時間決めとく?」と海人が時計を見た。
優衣は頷き、「じゃあ、3時に」と同じように時計を見て答えた。
「分かった。じゃあ、3時に行くね」と海人は頷くと、時計から優衣へと視線を移す。
「じゃあ、僕もお昼に行って来るよ」
海人は紙をポケットに入れた。
さっき何かを出し入れしたのとは反対のポケットに。
「いつもお昼はどうしてるの?」
「お弁当だよ」
海人はそう言うとポケットに両手を入れ、「じゃあ、後でね」と階段へ向かって行く。
優衣は自分がした質問に後悔をした。
何気なく聞いた質問の答えに後悔をしたま病室に戻る。
「お弁当だよ」
海人の答えに戸惑いを感じてしまう。
『誰が作ってるの?』
優衣は3時になるのを待った。
3時になれば、海人は自分だけの海人になってくれる。
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