1.プロローグ―あの人―
第1話
いつもの時間。
いつものバス。
いつもの席。
そして、いつものあの人。
2年目の制服のリボンを整え、桜優衣(サクラユイ)は、今日もあの人の姿に目を奪われる。
優衣の進学した高校は制服は指定だが、その他は自由に身に着けられた。
リボンでもネクタイでも自由に選ぶ事が出来る。
優衣は入学式の帰りに買った紺色のリボンを2年生になった今でも着けている。
4月になり、新しい年度に変わる時、優衣は少し不安だった。
環境が新しくなり、いつもの幸せな時間が無くなってしまうのではないかと不安だった。
1日の中で最も短い幸せな時間がそこにある。
高校に進学するために、両親と一緒に暮らしていた京都を離れ、1人でこの町に引っ越して来た。
昔、祖父母が住んでいた平屋に優衣は1人で住んでいる。
祖父母の持ち家なので、家賃などは発生せず、光熱費は両親が払ってくれている。
高校に入学してから毎朝、通学のためにバスに乗るようになった。
慣れない町、まだ友達も少ない1年目の春。
一緒にバスに乗って登校する友達もいない。
1人でバスに乗り、黙ったままバスに揺られる毎日の中、優衣はあの人を見つけた。
いつも乗って来るあの人。
いつも難しそうな本を片手に、たまに唇を舐める仕草が気になった。
いつしか優衣は、同じバス停で乗って来るあの人に、目線だけではなく心までも奪われた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます