*サヨナラ…幸*
第78話
麗香の死を知り、芸能界を引退するとマスコミの前で発表したあの日。
結希はどうしても会いたくて、幸の元へと向かった。
何時間も待ち続け、やっと会えた。
けれど、あの日待っていた結果は、【悲劇】だったのだ。
幸の住むアパートの部屋に入れてもらい、結希は自分の思いを全て幸にぶつけた。
自殺をしようと思っていた時、自分の命を救ってくれた路上ライブをしていた時の幸を思い、結希は必死で「辞めないで!」と訴えている。
路上ライブで1枚500円で売っていたCDを手に結希は必死で止めた。
「幸のこの歌で生きようと思ったんだよ…。」
その幸が今、全てを捨てようとしている。
そんな幸の心に、結希の気持ちは愚(おろ)か、声さえも届きはしなかった。
結希が大切そうに握り締めているCDを奪い、幸はそのまま壁に投げ付けたのだ。
そして言ってしまった。
「俺も死にたい…」とーーー。
結希に言ってしまった。
そんな幸に傷付き、幸の部屋にを飛び出したと結希は思っていた。
そしてその後、この小屋で幸と生きていたと思っていた。
けれど、真実はまるで違う。
全て、幸の全てを自分の手でこの時、消していた事を、今でははっきり覚えている。
「俺も死にたい…。」
この声に、もう1人の結希が目を覚ました。
そして、本当の結希は目眩の中へと閉じ込められて行く。
もう1人の結希が幸の前へと現れ、幸の全てを消そうとしている。
そんな事に気付かないまま、幸は結希の前で、泣き崩れている。
「ごめん。こんな思いさせて…。でも死にたいんだ…。」
幸は結希の手を取り、そう嘆(なげ)いた。
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