第36話
終業時間が近づいていたが、絵里はモヤモヤとする気持ちのせいか進みが悪く、いつもより仕事が残っていた。
そんな絵里のデスクにまた、北木がファイルを持って現れる。
残業はいいとしても処理が間に合わない不備が出るでは業務に支障をきたし迷惑になる。
「これもお願いしたい」
「すみません。申し訳ないんですが、一人では処理しきれないんで別の人に頼んで貰えないですか?」
「あぁ、先に渡したファイルとこれは紺野君にお願いしたいものなので頼む。他のものは僕が引き受ける」
北木の持ってきたファイルのみが残され、まだ終わっていないファイルや書類をすべて持って北木は自分のデスクに戻って行く。
丁度、終業時間になり北木が声を掛ける。絵里は北木の行動に驚き、目を丸くしてその姿を見ていた。
「絵里先輩、お疲れ様です! お先に失礼しますね。頑張りすぎないようにしてくださいよ」
「うん、お疲れ様。また明日」
挨拶を交わしながら、オフィスはあっという間に北木と絵里の2人だけになりキーボードを叩く音と空調の音が響く。
横目で北木を盗み見ると、てきぱきと仕事をこなし持って行ったファイルや書類がどんどん片付いていくのが分かる。
――お礼のつもりで仕事手伝ってるの?
気になるが、とにかく自分の仕事を早く終わらせようと絵里は自分のパソコンに視線を戻す。
普段と違い余計なことばかり考えてしまい、少し時間が掛かったがなんとかまだ日が暮れる前には片付いた。
――あの日と同じだ。日が出ているのに雨が降ってる
窓の外を見ながら、まとめた書類を北木のデスクに持って行く。
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