片道切符
壱
第1話
ジリジリリィ――ジリジリリィ――
ダイヤル式の黒電話がけたたましく鳴り響く。
長い鼻が受話器を取った。
「どなたですか?」
ぶっきらぼうに話しながら受話器を鋭い爪がある虎の手に持ち替えた。
「あなたでしたか。毎度ご贔屓に・・・・・・えぇ、そりゃまたおっちょこちょいですね」
『・・・!!』
熊のような大きな体を揺らして笑う。
電話の相手は緊急を要しているようで、怒鳴り声が返ってきた。
「分かりましたよ。ただ、お代の方は分かってますか?」
『・・・・・・』
「えぇ。それならお引き受けしましょう」
受話器を長い鼻で戻すと、異形の姿が着物姿の男に変わった。
「やれやれ、行きますか」
風呂敷包を背負うと電話の脇に置かれたカンカン帽をかぶる。
カランコロンと下駄の音をさせて男は闇の中に消えていった。
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