第7章

第7話

リリィが頭を抱えていたその時、部屋の扉をノックする音が聞こえた。


「…どうぞ…。」


ユリアかと思い、扉を開いた先には、リリィの父と母が立っていた。


「お父様、お母様…。」


「リリィに話があって来たの。」


「話…ですか…。」


リリィの語尾が弱まる。


リリィは、両親が苦手だ…。


こうして、話に来る時は、大抵まともな話ではないと分かっていた。


「リリィ、お前に見合いの話が来てな。」


「お見合い…?私、今とても、そんな気分じゃ…」


リリィの言葉は、遮られた。


「お前には将来、この家を継いで欲しいと思ってな。先方も是非と言っている。」


「リリィも、素敵な方が欲しいと言っていたじゃない?」


ーお父様、お母様…。


どうして、「私」を見てくれないの…?ー


「…時間を下さい…。」


心に淀んだ物が溜まっていく…苦しい…。


『助けて…ユリア…。』


リリィは、その場で力なく倒れ込んだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る