第8話
「その人の話をしたり不意に思い出す時って、その人の魂が近くにいて見守ってくれてるんだって」
そう言って美代が笑った事があった。
良く晴れた日や、夏の香りがするベランダに出た時、ふっと彼女を思うのはいつもみたいにニコニコとしながらどうでもいい事を話に来ているのかも知れない。
「なんでかな」
「ん?」
「なんで、なんだろう」
そう呟いた彼に私は答えた。
「きっと、ただ。その瞬間の空を見てみたくなっただけだと思う」
「……え?」
私にはそう思えて仕方なかった。
「本当にいくつもりなんかなかったのに、どんな感じか試したらウッカリしたんだと思う」
「なんでそう思うんだよ」
「なんか、そう思う」
「……魂の半分が、そう感じる?」
彼の言葉に顔をあげる。
「よく美代が言ってたから、おまえと自分が同じ魂の半分を受け継いでるんだって」
「あはは、うん。そう……そうなの」
「わかんないけど、あるのかもな……ううん、あってもおかしくないな」
「そうよ」
いい天気。
白い雲が嘘みたいな空に浮かんでいる。
「もう少し待ってて」
私は空を見上げて呟いてみる。
魂の半分に。
ふわりと
あの日と同じ、夏の匂いがした。
大好きな彼女に捧ぐ
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