第6話

ひどい汗をかいて起きる。


 

 もう朝だった。



二度寝をしたらきっと待ち合わせに遅刻する。



ゆっくりとベッドからおりると、シャワーを浴びに階段を降りる。



日本の城ではない城や着物というのか民族衣装は、浦島太郎を読んでもらって記憶したのか?



「夢が気になってます」



なんて誰に相談すればいいのだろうか?




思春期の云々と片付けられて終わりだ。


シャワーを浴びて朝食をしっかりと摂ると仕度を済ませて待ち合わせに向かった。



グループデートは気乗りはしないが、久しぶりの動物園だ。楽しもう! とバスに乗り込んだ。




動物園の入り口にはツキノワグマのツッキーくんの看板があって、記念撮影ができるように今日の日付けが入った札を持っている。



陽気な感じのツッキーくんは動物園の人気者だということがわかる。




「あはは、かわいい」



私は大きな動物園マップを眺めながら皆が来るのを待っていた。



「あ!」



目の前で、すてんと小さな男の子が転んだ。


手に持っていたボールが転がっていく。



テンテンテン……と、小さく弾むように転がる球体が眩暈を起こさせる。



フラッシュバックのように、同じシーンが目の奥に映る。


小さな男の子、綺麗な模様のボール……球。



大きな手がそれを拾い上げる。



『はい、蹴鞠をしていたのか? 偉いな転んだのに泣かないとは』



誰の声?



でもとても優しい声が耳のすぐそばでした。



ふっとボールを目で追うと、そのシーンと同じように大きな手がボールを、拾い上げた。




「はい、ボール。偉いな。転んだのに泣かないのか?」



「うん、ボク。サッカーやってるから、これぐらいへっちゃらなんだ」


「そっか、すごいな」



大きな手の主はフニャっと笑った。



手をふる男の子が少し離れると、ゆっくり立ち上がってニコニコとしたままそちらの方向を見ていた。



大きな手の主は体も大きくツッキーくんの看板を余裕で越えていた。

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