第3話

戦場でのサムは、高台で涼しい顔をして見物をする。


そして俺に酷評をするんだからいい身分だ。


だが……俺ももう戦に出ることもないだろう。


長い戦が終わりようやく、この国にも平穏な日々が訪れようとしたいたのだ。


伯爵という身分である俺は、戦が終わったとたんに見合い話が舞い込むようになった。


両親にしつこく言われ連れ出され、舞踏会やらお茶会に顔を出す事も多くなったが、サムと違ってこんな無骨な容姿はご婦人たちからは恐れられるようで、華やかな場での俺の居場所はテラスとなっていた。


サムは羽飾りを沢山つけたご婦人がたよりも美しかった。


金色の髪が風に揺れる度に甘く優しい香りがする。


どこのご婦人がこんなに素敵だろうか?


俺はサムより美しいブロンドの女を見たことはなかった。


サムは華やかな場所が好きで、そしてそんな場がよく似合う。


でも、いつも微笑みながらワインで頬を染めて俺の傍にいた。


「サム……俺から離れて楽しんで来ていいんだぞ」


そう言う度に呆れたように笑ってワインをあおった。


「何言ってるんだよ、ボクがいないとダメなくせに」と白い歯を見せる。



そう、サムの言う通り俺はひとりではこんな場所にはいられないのだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る