第5話

「シュウ?」


部屋を覗くと、シュウは机に伏せて眠っていた。

野球の雑誌を見てたのか、開いたベージは夏の大会で負けた高校の記事が載っていた。


「相変わらず睫毛長い……ムカツク」

「……」


肩をポンポンと叩いてみるもスースーと寝息をたてて気持ち良さそうにするだけで、起きる気配がない。


ヨシヨシと頭を撫でてみるが、これまた起きる気配はなかった。


「うん、起きないな」


無言で頬をつついてみる。


「……もう」


ふっと、隣の机に目をやる。


綺麗に整頓された机に飾られた日めくりカレンダーは3年前の今日の日付けてとまってた。


「……」


8個も上のシュウのお兄ちゃんの歩さんは、私の憧れだった。


 シュウと二人で並ぶ写真が飾られている。歩兄は、バスケ部だった。

いま思えば、チャラいバスケットマンだ。茶色く染めた茶髪をパイナップルヘアにまとめて、ロングシュートを決める姿に女の子達がキャーキャー言っていたのを見て嫉妬した事がある 。

「いつか歩兄のお嫁さんにしてね」


そう言っていた紛れもない初恋だった。


でも3年前の今日、歩兄は人の物になった。


もちろんそれは、とてもおめでたいことで私も両親と祝福をしているフリをした。


クリスマスに結婚式なんてベタすぎてウザすぎてキザすぎる。中二の私は、厨二な発言をして歩兄を笑わせた。


お嫁さんは、高校からの彼女でとても綺麗な人だった。


歩兄の試合でチアリーダーをしていた女の人だった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る