第9話
私は泣き出しそうだった。
指を開いて空を眺めると、空の月も再び顔を出した。
「じゃあな、明日学校でな」
「……ありがとう。えっと、た、高橋」
「オースケでいいよ」
「う、うん。明日ね」
ものすごく安い女かもしれない。
嬉しかった。
そして、恋に落ちていた。
自覚するほどに、ハッキリと恋に落ちていた。
「明日……」
オースケはそこまで言って少し考えて耳を赤く染めながら言った。
「明日、昼メシ一緒に食わねえ?」
「えっ!」
「授業終わったら、教室迎えに行くわ」
「……うん」
顔から火が出るほど熱かった。
オースケはカクカクとした動作で歩き出した。
「あっ! お、おやすみ!」
「……」
体ごとこちらに向くとフニャリと笑って、手を大きく振った。
「おやすみ!」
捕まえた小さな月をぎゅっと握って、オースケが角を曲がるまで見送ると、そのガラスを空にかざして丸い月と重ねる。
キラキラと光ってとても綺麗だった。
私は少しだけ口角をあげて背筋をピンと伸ばす。
おやすみ、今日のお月様。
おやすみ。また、明日。
おわり
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます