第35話 喜んで迎えよう
『ただいま~』
『おかえりなさい、
「お父さん、おかえり」
お父さん、帰ってきた。
『父さんお帰り。集会所の仕事終わったのか?』
『おう、今日工事が完成したんだ。引き渡しは明日』
『Kaitoさんやったわね、納期より2日前倒しじゃない』
『若いのが頑張ってくれてな。あれは将来楽しみだ』
『自治会長から聞いてるよ。Kaitoさんの指示がよかったのもあると思うよ』
『へへ、そうかな』
『そうよ旦那様。と、いうことで今日はお祝い』
『えっ……あ、この匂いは
『ご名答~』
『
『ごゆっくり~』
「お父さんの大好物。
『基本は“胃袋”よ』
だけど蓼なんてどこから調達してきた?
『さて、
「それで、ゴキゲンになったところで私が誕プレ」
『Kaitoさん泣いちゃうかも』
「そういえば小学校の時以来ね」
『もう一つ
「え?」
『
『うん、成功してよかったよ』
『私から見ても的確なアドバイスだったと思うよ。だから援護射撃をして』
『援護射撃……うん、分かった』
…………
『いい湯だった』
『できてるわよ』
『うん、みんな待っててくれたのか』
『『『「いただきます」』』』
『おお、美味い』
『そうでしょ。
『おお……これは酒が欲しくなるな』
『フフフ、あるわよ』
『おひとつどうぞ、旦那様』
『お……これ、いい酒だよ。Charlotteありがとう』
『姉貴、鱁鮧ってなんだ?』
「鮎の内臓の塩辛っていうことは知ってるけど、食べたことはないわ」
『貴重……なんだろうな。イカやカツオに比べたら個体が小さいし漁獲量も少ないから』
「たぶんそうね」
『Charlotte、千桜莉たちにも食べさせてやってくれ』
『はい、Chiori、Suguruも食べて』
お父さんは自分の好物を独り占めするんじゃなくて布教するタイプ。
まあ私が似ちゃったんだけど。でも、さすがにここでオレンジソースは持ち出せない。
お父さんおすすめの鱁鮧を食べて見ましょ。どれどれ……
『う~ん、おぼろげにしか良さがわからない。俺には早いのかな……』
「なんとなく……このお酒にあうような気がする?」
『まあ、こういうものもあるということだよ。二人ともまだ若い、いろいろなものを試してみるのがいいと思うぞ……いやー美味いな。うれしくなるよ』
『それはなによりよ』
来た、Momの目くばせ。
「お父さん、もうすぐ誕生日でしょ。しばらくあげてなかったけど、誕生日プレゼントを用意したの」
『え……本当か?』
「もちろんよ。日頃の感謝を込めて」
『ありがとう。涙が出そうだよ……開けていいか?』
「いいよ」
『おお、ネクタイ……これはシルクか』
『私にも見せて……いい縫製ね』
『ありがとう、千桜莉。大事に使わせてもらうよ』
「どういたしまして。喜んでもらえてうれしい」
よし、ここだね。ここで傑が『で、お願いごと……千桜莉が交際している男性を連れてきたいんだろ』
『『「え!」』』
『みんな何を驚いてるんだよ。四半世紀の付き合いのCharlotteまで』
『Kaitoさん、Kaitoさんは千桜莉の周りに男の影があるのを極端に嫌うんじゃなかったの?』
『俺は千桜莉の男親だぞ。男だから異性と付き合い始めた際の変化、巷間でよくいう“可愛くなった”が良くわかるし、親だからその異性への気持ち……本気度と言えばいいかな、これがわかる』
『確かに、学生時代に何度か変化を感じたことはあった。でも、本気になり切れていないみたいだった』
!
私、無意識にあいつらの不誠実さを感じ取ってて、それが表に現れてたのかしら?
それとも、彼氏ができたっていうことだけで舞い上がってただけだったのかな?
いずれにせよ、それをお父さんは感じ取ってたってこと?
『それに加えて、月並みだけど父親的に娘をどこのウマの骨とも知れない男に奪られるのはイヤで、強い態度を取ってしまってたかもしれない。だから千桜莉』
「はい」
『千桜莉のためを思ってとかプレッシャーをかけるつもりはなかったというような言い訳はしない。ビビらせてしまって申し訳なかった』
「謝らないで、私が誤解してたんだから……その、学生時代に付き合った人は、家に連れてきてもいいかなと思いかけたときに、二股とか既婚者に手を出してることが発覚したの。ウチにまねかなくてむしろ良かった」
『そりゃどこのやつだ! 殴ってやる!!』
雄郷と同じこと言ってる。
「それには及ばない……決して泣き寝入りはしてないよ。手の届く限りに周知してフってやったから……あいつら大学在学中は誰とも付き合えなかったんじゃないかな」
『千桜莉がそれでいいんならいいけど……まあ、今回千桜莉の本気度はMAXと見た。喜んでその
「姉貴、そんな過去があったんだ」
『
『うん、胸に刻むよ』
『それで、千桜莉』
『うん、いつか話した会社の先輩の
『ああ、覚えてる……あまりプレッシャーを感じずにと言っても感じないわけがないか。まあ自分の言葉で挨拶してくれと伝えてくれ』
「いつが都合がいいかな」
『俺は今度の土曜日でいいと思うが。Charlotte?』
『私もそれで構わないわ、夕方の6時にしましょうか。ご馳走作るわ』
「私も手伝う」
なんか、あっさり認められちゃった。
そういえばお父さん、“どこで”出会うかじゃなくて、どんな人と出会うかが大事だと言いたかったんだ”と言ってたよね。あの時から歓迎する気になってたのかな。
それにしてもちょっと拍子抜け……でも私だけ緊張してたのは悔しいじゃない。
「傑、女の覚悟を胸に刻んだところで、あんたも報告があるんじゃないの?」
『え?』
『傑もか』
『姉貴、巻き込むのは……』
「何言ってるの。あの子は覚悟を決めてるのよ。それを軽視するの?」
『そんなわけじゃないけど』
「だったら!」
『えっと、俺恋人ができたんだ』
『ほう、同じ大学の子か?』
『いや、その』
『?』
『実は、姉貴の母校に通ってる子で、後期1年次』
『後期1年次って高1か!』
『きっかけは――』
◆◆◆◆side Charlotte◆◆◆◆
Kaitoさんの足音が近づいてくる。
『ふう、いい湯だった』
「今日はお疲れ様、Kaitoさん。ストロングボウいかが?」
『いただこう』
『「乾杯」』
『二人とも成長したな。傑には驚かされたけど』
「ゴメンね、Kaitoさん。私もKaitoさんのことを誤解してた」
『誤解? ああ、男親にとって娘は妻に次ぐ2番目の恋人だから、理性的に振舞ってるつもりだったけどそういう印象を与えてたんだな。俺のほうこそすまなかった』
「Kaitoさん」
『うん?』
「今日のKaitoさん、いつにもまして恰好良かったよ」
『そうか?』
「だから、お詫びとお礼を兼ねてね」
『お詫びとかお礼とがは思わなくていいけど……んっ』
いいでしょ
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
ご訪問ありがとうございます。
最初は全然そんなつもりはなかったんですが、かなりの山場になってしまいました。
が、今考えれば彼女のご両親への挨拶は、大きな節目ですね。
これだからパンツァーは……
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