うたがすべて

 歌が全てだった。


 想いを声に乗せて歌えるわけじゃなく。

 鬱憤を楽器に乗せて奏でるわけじゃなく。

 イヤホンで耳を塞いで、好きな音楽の中に浸る。

 大音量で流れる他人の声に自らを重ねる。

 想いを、鬱憤を、この瞬間を代弁してくれる。

 表現する術を持たない自分にとって。


 歌は全てだった。

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