第107話 54日目 1月14日(火)海老名
それからも、順調に進み最後の休憩場所になりそうな海老名SAへと辿り着いた。
東京へ向かう高速道路での最後の大きなSAだろう。
「緋音、メロンパン買う?」
「うん、やっぱり海老名といったらメロンパンだよね」
『ぽるとがる』さんのメロンパン。
確か、ギネスにも載るほどに有名だったはずだ。
これは、入院中に見たお昼のテレビ番組で知った事である。
海老名SAは、グルメが潤沢だ。
建物の外でも店が出ているほどに。
車を出ると、直ぐに緋音が口元を抑えた。
あー、肉の焼ける匂い。
緋音にはつらいかもしれない。
「俺は、少し買い物をしてくるね」
「えっと…私はお手洗いだけすましてくるよ」
俺達は、車を降りて入口の前で別れる。
先ずは、メロンパンを買おう。
お店へ向かう。
昼を少し過ぎた時間だというのに人混みが凄い。
いや、そんな時間だからこそかもしれない。
俺は、キョロキョロしながら辺りを見渡す。
実際、此処に来るのは初めてだ。
上京した時は、新幹線だったかな。
『海老名カレーパン』?
へぇ、エビフライとカレーか。
衣がコーンフレーク!
これは、買いかな。
袋に入っていれば、そこまで匂いもきつくないだろう。
『ゴロっと旨塩海老名まん』?
うーん、美味しそうだけどこれは匂い的にきついかな。
次来た時に食べよう。
『カップライス』?
これも美味しそう。
でも、パンだけにしよう。
俺は、結局メロンパンと海老名カレーパンだけを買って出ることにした。
のだが、途中で『ジャージーソフトクリーム』を見つけたのでこれも買った。
一応、2つ分。
緋音が、食べれなくても俺が二つとも食べればいいだろう。
車に戻ると、彼女はもう戻って来ていて車の中にいた。
緋音の車なので、彼女自身も鍵は持っている。
寧ろ、俺の方がスペアキーを使っている。
「はい、緋音。アイス」
「ありがとう。私も飲み物買っておいたよ」
「それは、助かる。ありがとう」
緋音は、そのあと問題なくジャージーソフトクリームをペロッと食べた。
杞憂でしかなかったようだ。
パンは、後部座席に置いておく。
今すぐ、食べたいわけではなかったから。
「じゃあ、あとはホテルまで向かっていいかな?」
「うん、えっと。ナビセットするね」
「助かるよ」
俺達は、ここまではナビを主要都市設定にしてきていた。
なので、完全な目的地ではなかった。
それを、緋音が宿泊予約を入れているホテルに設定する。
実は、予約したところを俺は知らない。
目的地が、『ファーイーストビレッジホテル東京浅草』とされた。
「えっと、なんだかとても高そうなホテル名だけど」
「うん、三ツ星ホテルだもん」
「えー」
俺は、驚愕するしかなかった。
ちょっと、握ったハンドルが怪しい動きをしたが大事には至らなかった。
「もう、驚きすぎだよ」
「いや、そりゃあ驚くって」
「折角ならいい所に泊まりたいじゃない」
そう言われると、反論できなかった。
まあ、俺が尻に敷かれているのは言うまでもないことだろう。
なお、その後辿り着いたホテルの夜景を見てここでよかったと思ったのは別の話。
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