第106話 54日目 1月14日(火)富士川楽座

俺達は、富士川楽座のラウンジに腰を下ろしていた。

眼前には、雲一つなく陰ることのない富士山を眺めることができている。

ここでは、1時間ほどの休憩を摂るつもりだ。

先程胃薬も買う事が出来、飲んだので俺の方は落ち着いた。

そう考えると、女性は大変だと思った。

こんなにつらいのに、薬を飲むことができないのだから。


「慎くん、慎くん。観覧車乗ってみない?」

「観覧車?ああ、確かにあったね」

「こんなに綺麗に見える日なんだから観覧車も素敵だと思うの」

「そうだね、行ってみようか」


実際は、結構心配。

でも、口にしたらきっとストレスになるだろう。

だから、彼女がしたいことをさせてあげるのが一番だろう。

まあ、緋音ならそんな危険なことをすることはない…だろう。

俺達は、観覧車へと向かった。

観覧車フジスカイビューは、1周約12分。

富士山麓が一望できるらしい。

あまり混んでもいないのですぐに乗ることができた。

まあ、ド平日なのだから仕方ない。

ゴンドラに、まず俺が乗る。

そして、手を差し伸べる。

緋音は、不思議な顔をして俺の手を眺め…手を取る。

俺は、彼女を引き寄せるとゴンドラの椅子に腰を下ろす。

対面するように座っている。

流石に、片方に寄ると怖いしな。


「慎くん、なんかタブレットがあるけど…」

「ホントだ…なんだろう、これ」


備え付けのタブレットが窓側にあった。

いや、全面窓か。

うーん、壁?うーん、壁でいいか。

『観覧車ナビ』と表示されたそれには、『周辺情報』『富士山ビューポイント』なるアイコンがあった。

なるほど、案内板なのか。


「このあたりの情報とか富士山を見るポイントを教えてくれるみたいだな」

「なるほど」

「まあ、どこかに出掛けるほど長くここにはいないから別にいいかな」

「うん、いまは景色を眺めてたいかな」

「ああ、綺麗な景色だもんな」


俺達は、眼下に広がっていく景色と眼前の富士山を眺めることにした。

気が付くと、スマホで写真を撮っていた。

そして、そして、フォルダには緋音の写真も撮りまくっていた。

お互いに、お互いを撮っていたからスマホも映り込んでいる。


「慎くん、てっぺんだよ」

「あ、じゃあツーショットも撮ろうか」

「うん」


俺達は、富士山をバックにツーショットを撮る。

そんなことを続けて観覧車は下まで辿り着いた。

ムードは無く、ただはしゃぐだけだった。

まあ、楽しいのだから仕方ない。

それから、簡単に昼食を済ませ俺達は富士川SAを後にした。

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