第41話
「それで?どういう事かな?緋音」
「あはは…なんのことかな?」
緋音は、明らかに動揺している。
何かを隠しているのは明らかだ。
それに、酷く目を逸らす…いや、目が泳ぐ仕草は隠し事をしているときの緋音の癖だ。
「緋音、癖直ってないね…隠し事をしてる時、俺の目を見ないし泳ぐんだよね」
緋音は、肩をビクつかせる。
まあ、図星だったんだろうな。
昼休みは、実はまだ半分くらいしか時間が経っていない。
元々、放送自体は30分を予定しているそうだ。
「えっと、怒らない?」
「話によるかな」
「嫌いにならない?」
「話によるかな、危険なことやヤバいことじゃなければ全然問題ないよ」
「なら、大丈夫」
緋音は、ほっと胸を撫で下ろした。
俺にとってしてみれば、何が何だかと言った感じである。
「実はね、慎くんが入院して退院すること私知ってたの」
「はぁ?」
「慎くん、入院中に看護師と結構話してなかった?」
俺は、2年間の入院生活を思い出す。
確か、担当だった看護師さんと話をした気がする。
「あの子、あれでも看護師長なんだよ。
それに、私の友達…ちょうど入院した病院で働いていたんだ」
「ああ、あの人が」
「だから、私はね。慎くんに会いに行ったんだよ」
「そっか、ならよかった。ありがとう、昨日緋音と再会してなかった俺は…」
多分、俺は生きる気力すら湧かなかっただろう。
昨日、強引に連れ回してくれたお陰で俺は生きている。
緋音は、優しく俺を抱き締める。
その所為で、俺の顔は彼女の胸に埋もれるのだがこれはこれで幸せを感じる。
息苦しくはあるけど。
「私は、慎くんの傍をもう離れないから。
慎くんが要らないって言わない限り離れてあげないんだからね」
俺は、緋音の背中を軽く叩く。
息がそろそろできない。
緋音は、はっと気が付いて身体を離す。
「あはは、ごめんね。慎くん」
「うん、緋音の気持ちは分かったから大丈夫だよ」
俺としても、そう言ってもらえてうれしかった。
何と言っても、俺は失うモノが多すぎた。
東京での日々は、代償に見合う比重ではなかったように思う。
酷使され、搾取され、使い潰されて。
だからこそ、絶望しきった。
辛いリハビリに耐えれたのは、何の為だったのかいまは分からない。
でも、きっとまた緋音と出会う為だったんだと今は思うことにしよう。
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